県内バス全無料化「1世帯月1000円負担で可能」 熊本で1日やってわかったこと
県内バス通年無料は「1世帯月1000円で可能」
九州産交グループの試算によると、熊本県内の路線バス運行に関わる年間コスト(各社の運賃収入と、赤字に対する補助金の合計額)を県内の総世帯数で割ると、1世帯当たり約1万2000円。つまり、各世帯が毎月1000円、何らかの形で費用負担すれば、路線バスを通年で無料にすることができる計算です。
もちろん、国や自治体の財政が厳しいなか「税金から月に1000円負担して」と言っても、かんたんではありません。人口密度が比較的大きくバス事業の効率のいい地域と、そうでない地域とで、環境も大きく異なります。さらに、「税金で負担しているんだから」と、全ての県民が「ウチの集落にも無料路線バスを」と主張したら、月に1000円どころの負担額では到底間に合いません。
ただ、この指摘が、わが国の公共交通、とりわけバス業界のあり方を考えるうえで示唆に富んでいることは間違いありません。
日本では、戦後、路線バスなどの公共交通を、主に民間事業者が担ってきました。自家用車が現在ほど普及する前、地方の路線バス事業は「儲かる」ビジネスだったのです。しかし、全国の路線バスの輸送人員はピーク時の約4割にまで減少しています。地方のバス路線の多くは赤字となり、国や自治体の補助金が投入されています。バス事業者が中心市街地に多く保有する不動産の価値も低下し、「副業」の収益性も悪化しました。路線バス事業者の経営と、現状でも多くの税金が投入されている地域公共交通の路線網とを、人口がさらに減る中でどう維持するか、真剣に考えるべき時期が来ています。
サクラマチの開業は、地方都市において、鉄道駅周辺や郊外ではなく、旧来の中心市街地において行われた珍しい大規模な再開発事業です。前例のない「県内バス・電車無料の日」と合わせて、人口減少時代の日本社会のあり方を問う取り組みであると言えるでしょう。
【了】
Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)
1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。
バスタ新宿は、高速バス専用のターミナルとしては日本最大であって、
市内バスも含むバスターミナルとの比較は無意味だと思う。
おもしろい社会実験。 1回だけでなく、毎月や曜日を変えるなど10回くらい行なってみると、本当に需要があるのか、何が起こってくるのか、が分かってくると思う。 交通量の減少(時間短縮)、高齢者の運転の減少、排出ガスの減少など、効果(実効)の規模も見えてきて、実現性が高まる(やらない?)と思う。