県内バス全無料化「1世帯月1000円負担で可能」 熊本で1日やってわかったこと

熊本県内全域で実施された「県内バス・電車無料の日」により、公共交通の利用者は普段の2.5倍増、市街地の渋滞長は半減するという結果になりました。1世帯あたり月1000円負担すれば、通年の実施も可能という試算も出ています。

県内バス通年無料は「1世帯月1000円で可能」

 九州産交グループの試算によると、熊本県内の路線バス運行に関わる年間コスト(各社の運賃収入と、赤字に対する補助金の合計額)を県内の総世帯数で割ると、1世帯当たり約1万2000円。つまり、各世帯が毎月1000円、何らかの形で費用負担すれば、路線バスを通年で無料にすることができる計算です。

 もちろん、国や自治体の財政が厳しいなか「税金から月に1000円負担して」と言っても、かんたんではありません。人口密度が比較的大きくバス事業の効率のいい地域と、そうでない地域とで、環境も大きく異なります。さらに、「税金で負担しているんだから」と、全ての県民が「ウチの集落にも無料路線バスを」と主張したら、月に1000円どころの負担額では到底間に合いません。

 ただ、この指摘が、わが国の公共交通、とりわけバス業界のあり方を考えるうえで示唆に富んでいることは間違いありません。

Large 20191124 01
熊本電鉄の御代志駅。同社の電車、バスも無料になった(2019年9月、成定竜一撮影)。

 日本では、戦後、路線バスなどの公共交通を、主に民間事業者が担ってきました。自家用車が現在ほど普及する前、地方の路線バス事業は「儲かる」ビジネスだったのです。しかし、全国の路線バスの輸送人員はピーク時の約4割にまで減少しています。地方のバス路線の多くは赤字となり、国や自治体の補助金が投入されています。バス事業者が中心市街地に多く保有する不動産の価値も低下し、「副業」の収益性も悪化しました。路線バス事業者の経営と、現状でも多くの税金が投入されている地域公共交通の路線網とを、人口がさらに減る中でどう維持するか、真剣に考えるべき時期が来ています。

 サクラマチの開業は、地方都市において、鉄道駅周辺や郊外ではなく、旧来の中心市街地において行われた珍しい大規模な再開発事業です。前例のない「県内バス・電車無料の日」と合わせて、人口減少時代の日本社会のあり方を問う取り組みであると言えるでしょう。

【了】

一般路線バスや高速バスが次々に出入りする(2019年9月、成定竜一撮影)。

「SAKURA MACHI Kumamoto」開業セレモニー(2019年9月、成定竜一撮影)。

【写真】規模は日本最大「桜町バスターミナル」の姿

Writer:

1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。著書に『高速バスのビジネス』(成山堂書店)、『「マーケティング感覚」の実装力』(同文舘出版)。新聞、テレビなどでコメント多数。

最新記事

コメント

2件のコメント

  1. バスタ新宿は、高速バス専用のターミナルとしては日本最大であって、

    市内バスも含むバスターミナルとの比較は無意味だと思う。

  2. おもしろい社会実験。 1回だけでなく、毎月や曜日を変えるなど10回くらい行なってみると、本当に需要があるのか、何が起こってくるのか、が分かってくると思う。 交通量の減少(時間短縮)、高齢者の運転の減少、排出ガスの減少など、効果(実効)の規模も見えてきて、実現性が高まる(やらない?)と思う。

記事ランキング

  1. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開
  2. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  3. 「知らなかった!」SNSで話題に 高速道路の“2つ並んだ赤い三角コーン”、実は超重要な「ある合図」だった! NEXCO公式が投稿
  4. 「断固たる措置を講じる」首都高公式ブチギレ! 「公平性を著しく損なう」非常識ドライバーに“鉄槌”…一体何が?
  5. ロシアのミサイル部品工場が「大炎上」 ウクライナ軍の航空機から発射した巡航ミサイルが「直撃」か
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号