【空から撮った鉄道】生まれ変わった京都の博物館と転車台 開館初日を上空から

京都の「梅小路蒸気機関車館」は、国鉄時代より複数の動態保存機が在籍する「生きた蒸気機関車」の博物館として有名でした。2016年、大阪弁天町の「交通科学館」と合併して「京都鉄道博物館」が開館。オープン直前のシーンを空撮しました。

梅小路は国鉄時代からの機関区の姿を色濃く残す、生きた扇形庫

 鉄道の博物館をイメージするとき、車両を収蔵する大型の建物があり、美しく整備された静態保存車を間近に見学できる施設を連想します。私が幼少期から毎週のように訪れていた、神田の「交通博物館」がそうでした。

 大型の建物と静態保存車のイメージが強いので、中学生のとき訪れた「梅小路蒸気機関車館」を見て度肝を抜かれました。目の前で動態保存の蒸気機関車が走り、文化財となった扇形庫が生きていて、まるで現役の機関区に迷い込んだ気分だったのです。

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オープン直前の「京都鉄道博物館」。すでに扇形庫屋根上の「梅小路蒸気機関車館」の看板は「梅小路蒸気機関車庫」に変えられている。左にある高架線路は、2016年に廃止となった短絡線である(2016年4月29日、吉永陽一撮影)。

 その後、大学生活で大阪に住んでいたとき、「梅小路蒸気機関車館」に通ったかと言えば、ちょうど鉄道趣味がトーンダウンしていたもので、意外と一度も訪れていません。再び訪れ始めたのは、写真家になって鉄道の取材を始めてからです。梅小路に再び興味を持つと、蒸気機関車との距離感が近いため「知る、学ぶ、触れる」がより一層深まり、素晴らしい博物館だなと再認識しました。

「梅小路蒸気機関車館」は、「生きた扇形庫」にスポットを当てて、2012(平成24)年に空撮をしました。扇形庫が中心になったデルタ線構造ということもあり、また子供の頃に感動した気持ちもあってぜひ『空鉄』本で紹介したかったのです。

 上空から垂直で捉える梅小路は国鉄時代からの機関区の姿を色濃く残していて、現役機関区そのものの雰囲気でした。蒸気機関車の煙で扇形庫が適度に煤汚れ、構内線路も油が染み込み、生きている証だなと感じたのです。

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旋回して北側から撮影。転車台には「SLスチーム号」の機関車の向きを変えるために操車係2人が待機する。扇形庫は耐震工事により「X」字の補強材が組まれている(2016年4月29日、吉永陽一撮影)。

 梅小路の空撮はその後、数回空撮することになります。2015年に「梅小路蒸気機関車館」が閉館し、大阪弁天町の「交通科学博物館」の一部収蔵物を受け継ぎ、拡張リニューアル工事を経て、2016年4月に「京都鉄道博物館」として生まれ変わることになったからです。

 開館日は4月29日。ゴールデンウィークの初日です。天候は大阪も京都も文句なしの晴れです。これは絶好の空撮日和! 梅小路時代から何度か空撮しているので、拠点となる八尾空港からの時間や現地での周囲の情景、垂直時の高度と焦点距離など、空撮する上でのデータはばっちりです。

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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