【空から撮った鉄道】札幌市電の特徴的なところ 路線だけでなく車庫も線路が周回
全国にある路面電車はその路線ならではの特徴があります。そのなかでも、日本最北の路面電車である札幌市電は、車庫や延伸区間が特徴的です。今回はこの2ヶ所の空撮を紹介します。
札幌市電の空撮は時間がほとんどなく、ピンポイント撮影に
札幌市電は札幌の開拓と発展とともに歩んできました。最盛期には新琴似、苗穂、豊平、円山公園などに路線が伸びましたが、昭和40年代から次々と廃止され、現在では大通の南側をループ状に走る路線となっています。
ループ状と書きましたが、長らくは「西4丁目」電停と「すすきの」電停を結ぶ折り返し路線でした。この両停留場を結んで延伸開業したのが、2015(平成27)年12月20日のこと。ループ線となって、利用者数も増加したとのことです。この半世紀は全国の路面電車の廃止が続いてきただけに、延伸開業は嬉しいニュースであり、「街の足」になるという路面電車の存在が見直されてきているのだなと実感しています。
さて、札幌市内の空撮は10数年前から撮っていたものの、業務の撮影ばかりで、残念ながら鉄道は皆無です。札幌市電も実はついでの撮影ばかりでして、約9kmの路線ながらほとんどの区間はまだ撮影していません。
そのかわり特徴的なところはピンポイントで撮影しました。ついでの撮影となるとどうしても時間がなく、被写体を絞らざるを得ないからです。この「ついで」のベースとなる撮影は、寝台特急「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」です。ダイヤ通りに動く列車を撮影するため、その合間を縫って寄り道をして札幌市電を撮りました。
2015年5月1日、臨時となった札幌行き「北斗星」を追い、新札幌駅の手前で列車と離脱。まっすぐに藻岩山へ向かいます。藻岩山の麓には交通局の電車事業所があり、新札幌駅付近から飛んでも数分以内に到着できます。「北斗星」が札幌駅へ到着する前に立ち寄るとなると、ここがちょうど良いのです。
電車事業所(以下、車庫)は1968(昭和43)年に開業した札幌市電の中枢で、藻岩山ロープウェイの近隣にあります。車庫の敷地は五叉路に面していて、本線の軌道は五叉路を直角に曲がっています。
遠目から見ると車庫は大きな屋根に覆われているので工場に見えますが、近づくと敷地内のアスファルトにレールが敷き詰められているのが視認できました。そしてこの車庫が特徴的なのは線路配置です。本線から分岐した線路が放射状に「庫」へ伸びるだけでなく、グルっと構内を一周する線路があるのです。
路面電車の車庫はいくつか見てきました。敷地の端にトラバーサーのある構造は多いものの、線路が周回する構造は初めてです。過去にこの車庫を見学した時に職員がこの構造を教えてくれ、空撮時にそれを思い出したので真俯瞰(真下)撮影を中心にトライしました。余談ながら、車庫を見学したときに「ビール電車」がやってきてトイレ休憩をし、電車はこの周回線路を使ってグルっと周り、再びお客さんを乗せて出発しました。そんなことも思い出しながら空撮をしていました。「ビール電車」はトイレ問題がありますからね……。
次に紹介するのは延伸区間です。延伸工事中の2015年8月20日と、開業後の2019年3月19日をお見せします。2015年に撮影した時は、前々回の記事「あれから4年半が経過 ラストラン2日前の札幌発上野行きブルートレイン」のとき、合間に空撮しました。
残り834文字
この続きは有料会員登録をすると読むことができます。
Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。