【空から撮った鉄道】旅客機と新幹線 一瞬の出会いを新大阪駅上空でチャレンジ

東海道・山陽新幹線の起終点である新大阪駅は、伊丹空港の南側約6kmの位置にあり、上空はひっきりなしに伊丹空港への着陸機が飛来しています。新幹線と旅客機が瞬間で撮れるのではないかと、新大阪駅空撮にチャレンジしました。

高速シャッターだとプロペラが停止したように写るが…

 新大阪駅は東海道新幹線開通に合わせ、宮原操車場東側のデルタ線に誕生しました。駅は東海道・山陽新幹線の起終点駅であり、在来線の東海道本線もホームがずらっと並ぶ、大阪の要です。

 その駅と街の直上には、エンジン音を響かせながら旅客機が飛来してきます。初めて見るときは、その大きな機体に思わず口をポカンと開けて見上げてしまうほど。この旅客機は伊丹空港へ着陸する機体です。空港とは約6kmの距離しか離れていないため、駅の真上では、旅客機が1100フィート(約330m)の高度で飛行しているのです。

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新大阪駅に入線するN700系と伊丹空港に向かうANAウイングスのボンバルディア「DHC8-Q400」が一瞬の出会いを果たす。ほんの一瞬のシャッターチャンスだが、この角度で撮れば、高速シャッターを切ってもプロペラが止まっていないように見える(2016年4月30日、吉永陽一撮影)。

 旅客機が着陸するために低空で飛行している。ということは、こちらがフラッと飛んでいって撮ることは困難です。旅客機が飛行する高度は、いつも空撮で飛行する高度に近いのです。新大阪駅周辺を空撮するときは、事前に伊丹空港の管制へ申請しても、当日の天候やエアラインの時刻によって、必ずしも時間通りに撮影できません(同じ管制区域内の大阪駅周辺でも、なかなか時間通りに撮影できないのですが……)。滑走路の延長線上にある新大阪駅は、経験上、予定通りに撮影を済ますのが困難です。

 では、低空がダメなら高空ならどうか。ということで、旅客機が飛行するよりも遥かに安全な高い高度から、200mm~400mmのレンズを使って狙うことにしました。思いついたのはだいぶ前で、関西空撮のときに狙おうと予定を組みましたが、雲が多くて断念していました。何日か滞在して粘るのも経費が嵩むため、次の機会を狙っているうちに年が明けたのです。空撮経費は自分の作品ストックと実験的内容のため自腹となり(いつものパターンです……)、経費を抑えながらソコソコの撮れ高を狙っていました。

 2016年4月。ちょうどNikonの新型機D500の実写テストをしていました。季節は春となって若葉が芽吹き、新緑も美しくなる最高の空撮シーズンです。超望遠レンズとボディとの相性テストもあって、これはチャンスだなと、4月29日の京都鉄道博物館オープン空撮と掛け持ちをしました(2020年3月18日配信「【空から撮った鉄道】生まれ変わった京都の博物館と転車台」を参照)。

 京都鉄道博物館空撮の翌日、天候は前日と変わらずに快晴でした。4月末の大阪は気温上昇などによってモヤっていることが多く、視程は芳しくない印象がありましたが、このときはスカッと50km先も見渡せる快晴で、高高度から地上を狙ってもクリアな視界で空撮できます。あとは事前に申請した許可のもと、滞りなく空撮できれば御の字です。幸いにも指定された高度で滞空していても問題なしとのことで、さっそくセスナ機は離陸しました。

 撮影高度は7000~8000フィート(約2100~2400m)。標高2000m級の山の頂から撮影する感じで、春とはいえ肌寒いです。伊丹空港の管制には撮影時間を伝えてあるので、その間で終わらせます。

 やってきた旅客機は、ボンバルディア「DHC8-Q400」。いわゆるプロペラ機です。高速シャッターだとプロペラが停止して写り、なんか間抜けになります。プロペラの回転がいい塩梅に回転して写る、シャッター速度1/250秒以下に落とそうかと悩みましたが、東方向からN700系新幹線もやってくるではありませんか(汗)。いきなり今回の主目的である「飛行機と新幹線の一瞬の出会い」が撮れるチャンスです。新幹線がブレないよう、シャッター速度は高速のままにしました。

 Q400を400mmレンズで追尾しながら、乗機のセスナ機の速度をパイロットに調整してもらい、N700系とすれ違う瞬間を狙います。超望遠レンズを手持ちで撮影するため、フレームアウトしやすいです。気が抜けない一瞬の出会いを捉えられました。懸念のプロペラ停止問題は、Q400のプロペラ部が真横になったときに撮れば回転しているように見えたので、それでよしとしました。余談ですが、何度かプロペラ機の空対空撮影をやった感想では、「プロペラが思いっきり回転して飛んでいる感」を出すいい塩梅のシャッター速度は、だいたい1/250秒以下ですね。

 さてその後ですが、走行中の新幹線と飛行中の旅客機の出会いは、ありそうでなかなかありません。急きょ予定変更。停車中の新幹線と旅客機の出会いを撮影しました。飛行機の影もくっきりと地面に落ち、それが屋根にかかる瞬間は見たことのない世界だと思います。200mm~400mmの焦点距離をテストしながら、大小様々な機体を空撮します。

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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