旅客機の速度 実は半世紀以上変わらないワケ かつては「スピード競争」も下火の経緯

スピードが上がらないワケは「コンコルド」まで遡る

 ジェット旅客機の速度が上がらない大きな理由は、効率の問題が挙げられます。もちろん技術的には「超音速旅客機」を飛ばすことは可能で、その代表的なものが1969(昭和44)年に初飛行した「コンコルド」です。その速さはマッハ2.02で、時速換算では2200km/h弱に相当します。そして開発中止とはなったものの、ボーイングも1960年代に超音速旅客機「2707」の開発を計画していたなど、かつてはより速いモデルをつくろうというトレンドはありました。

 ところが1970年代ごろから「速さより量」の時代へと移ります。きっかけは、「コンコルド」と同年に初飛行を迎え、大量輸送時代の先駆けとなった「ジャンボ」ことボーイング747型機といわれています。「コンコルド」と比べて「ジャンボ」は、スピードでは劣っても、段違いの座席数で一度に多くの旅客を運べました。

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「コンコルド」のエールフランス仕様機(画像:Simon_sees[CC BY〈https://bit.ly/2Z0AaSy〉])。

 また「速さ」より重視されたのが、環境や燃費であったのもポイントです。

 たとえば飛行機が音速を超えると、ソニックブームという衝撃波が生じ、これが地上への大きな騒音や機体への負担につながります。また、黎明期のモデルや「コンコルド」などは、周囲への騒音や環境への影響が大きいものでした。こうした理由から「ジャンボ」など、1960年代以降のジェット旅客機は一般的に、ジェットエンジンのひとつである「ターボファンエンジン(取り込んだ空気を圧縮後、その一部を燃焼に利用し、残りはファンノズルから直接大気中へ噴出して推力を得るもの)」を使用していますが、このエンジンは音速を超えると効率が下がってしまいます。

 時代が進むにつれ旅客機の「ターボファンエンジン」は、より騒音や燃費効率など環境に配慮したもの(高バイパス比ターボファンエンジン)に移行しますが、音速を超えると効率が下がる点は変わりません。つまりいってしまえば、あえて速度が音速を超えないように設計しつつ、そのなかで燃費の良さや低騒音を目指す、といった状況が続いているのです。

 とはいえ「超音速旅客機」の構想も、まだ完全に下火となったわけではありません。直近では2017(平成27)年、アメリカのブームテクノロジー社が超音速旅客機構想を発表しており、JALも、この会社に出資を行うなどの後押しをしています。

【了】

【写真】実はJALも発注 幻の超音速旅客機「ボーイング2707」

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コメント

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7件のコメント

  1. 300m/分なら時速18kmですが間違ってますか?ネット記事は誤植が多過ぎますが、最早記事自体の信憑性まで疑われますよ。

    • ご指摘ありがとうございます。訂正いたしました。

  2. ソ連にも、西側から コンコルドスキー とあだ名された超音速旅客機 Tu-144( だっけ… ) もあったな………

  3. 2020年5月18日の記事 旅客機音速を越えない。の投書300m/分でいちゃもんをつけてましたが。300m/秒の見間違いですよ。記事の正統性うんぬんの批判はこじつけです。たー坊

    • 「見間違い」って、そりゃ修正後だからでしょ
      アホなの?

  4. >ところが1970年代ごろから「速さより量」の時代へと移ります。
    B787の初期構想が「ソニック・クルーザー(マッハ0.9~0.95で飛ぶ予定だった)」だった件……。
    なおアメリカ同時多発テロによる航空需要の落ち込みやハブ・アンド・スポークからポイント・ツー・ポイントへの移行傾向が見られたことから効率の悪さも相まって現在のB787計画になったけど(ボーイングによる与太話説もあったのね。実際、支持は集まらなかったようですが)。

  5. ありがとうございます。やはり旅客機は戦闘機とは違い、速度よりも効率、つまりコスパでありますね。かつて敷居の高い乗り物とまで言われていた旅客機も今は、LCCの登場でより、お手軽に利用できる時代になりました。旅客機の世界では昔も今も、速度よりも効率性を重視していますね。