旅客機の操縦 夏と冬でどう違う? ANAパイロットに聞く 離着陸や巡航時 地域の差も
離着陸のとき 夏と冬で特徴的な地域もあり
――離着陸するとき、夏と冬でその方法が大きく異なる空港や地域などはありますか?
離着陸の操縦感覚や操縦方法については、季節による大きな変化はありません。しかし、日本には四季があり、季節による天候の変化が激しいため、悪天となる場合の運航は特徴的な空港も出てきます。
たとえば夏であれば、市街地に近いところに空港がある場合、日中は市街地上空で上昇気流が強いことなどから、着陸前のアップダウンが冬よりも大きくなります。そのため着陸の降下角度のキープと速度コントロールには、いつも以上の注意が必要です。
冬の場合、北日本や日本海側の空港は、降雪時に運航の厳しいところが多いです。横風の強い地形であったり、視界不良になりやすかったりしますので、これらの空港へ冬の悪天時にフライトする際は、事前準備、上空での情報収集、進入、着陸時の判断など多くの知識と能力が求められます。
また、冬の雪雲にも注意を払います。雲の高さはおおむね高度1万フィート(約3000m)程度が一般的で、これは着陸の10分前あたりの高さになります。着陸前のこの時間帯は揺れや被雷に特に神経を使います。ANAでは着陸約10分前を目安に、客室内の安全チェックを実施するようパイロットがCAに指示をしますが、雪雲がある場合はちょうどこの時間帯にかかることもあり、その際には指示時間を早めるといった工夫をしています。
また冬の日本海側、とくに北陸地方周辺は「一発雷」と呼ばれる非常に強いエネルギーを持った雷が発生します。飛行機は被雷をしても安全に飛行できますが、到着後の機体点検が必要で、場合によっては軽いへこみなどの修復作業を要することもあるので、当然これを避けるよう飛行しています。
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なお、取材に応じたANAのパイロットによると、とくに日本周辺は上空も含めて気象変化が激しいと言われており、日本を飛ぶパイロットは海外のパイロットよりも多くの気象知識、経験を持っているともいわれているそうです。
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