レーダーに見るイージス・アショア断念の善後策 その切り札「AN/SPY-6」とは?
イージス・アショアに代わる「目」として…?
日本では2020年6月24日に河野太郎防衛大臣が、イージス・アショアの配備停止を発表して以降、新たなミサイル防衛のあり方の議論が続いており、防衛省や自民党国防部会などでは海上自衛隊のイージス艦(ミサイル護衛艦)を増強する案も検討されています。
イージス・アショアに装備が予定されていたAN/SPY-7レーダーは、スペイン海軍とカナダ海軍の新型水上戦闘艦への搭載は予定されていますが、アメリカ海軍艦艇に搭載される予定はありません。アメリカ海軍は10年以内にAN/SPY-6を搭載するアーレイ・バーク級を、横須賀を拠点とする第7艦隊に配備する意向を示しています。
もし海上自衛隊がイージス艦を新たに建造するのであれば、第7艦隊、さらにいえばアメリカ海軍との共同作戦能力向上などの観点から、これまで述べてきたAN/SPY-6(V)1レーダーを搭載する可能性が高いと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
AN/SPY-6(V)4は、あたご型ミサイル護衛艦とまや型ミサイル護衛艦への搭載も可能となっており、両型のAN/SPY-1をAN/SPY-6(V)1と交換して、弾道ミサイル対処能力を向上させるという手法も考えられます。
海上自衛隊は弾道ミサイル防衛で大きな負担を強いられていますが、AN/SPY-6は保守整備に要する時間が1週間あたり3.5時間未満程度と極めて短く、また整備員の訓練期間もAN/SPY-1に比べて大幅に短縮されているため、イージス艦の稼働率向上や海上自衛隊の人的負担の軽減も期待できます。
新たなミサイル防衛のあり方はまだ不透明ですが、どのような形になった場合でも、海上自衛隊のイージス艦が大きな役割を果たすことに変わりはありません。海上自衛隊の負担を少しでも軽減して、その役割を果たしていく上で、AN/SPY-6レーダーは有益な存在であると筆者は思います。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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