旧海軍出身の老艦 離島の危機を救う オールド護衛艦「わかば」が従事した大脱出劇
海上自衛隊が旧日本海軍から引き継いだ唯一の戦闘艦艇である護衛艦「わかば」。沈没していたものを引き揚げ再使用していたため様々な不具合があったようですが、そんな老艦が活躍した災害派遣がありました。
沈没艦の再使用 海上自衛隊唯一の旧海軍艦「わかば」
台風10号が日本列島に接近しつつあった2020年9月4日(金)、鹿児島県十島村および三島村は、住民を島外へ避難させることを決め、鹿児島県知事は自衛隊に災害派遣要請を出しました。
自衛隊は数百人の離島住民を輸送するために、CH-47J輸送ヘリコプターやUH-60J救難ヘリコプターなどを出動させましたが、これまでも自衛隊は住民避難のために、艦艇や航空機をたびたび災害派遣で出動させています。特に50年以上前の1962(昭和37)年には、旧日本海軍艦を転用した海上自衛隊の護衛艦が同じように離島住民の救出に動きました。
護衛艦の名は「わかば」。太平洋戦争末期の1944(昭和19)年に、松型駆逐艦のひとつ「梨」として建造されたものの、1945(昭和20)年7月に山口県沖でアメリカ海軍艦載機の攻撃を受け沈没。
ところが戦後、民間業者がくず鉄にしようと引き揚げたところ、予想より状態が良かったため、創設間もない海上自衛隊に引き取られ、1956(昭和31)年に警備艦(のち護衛艦に改称)としてよみがえった艦です。
しかし、「わかば」は同型艦がないことや、エンジンなどが塩水に浸かっていたため、使い勝手は決して良くなく、非武装の練習艦を経て、実験艦として高角対空レーダーなどの装備試験に従事していました。
ある意味、裏方として用いられていた「わかば」ですが、再就役から6年後の1962(昭和37)年に人命救助の実働任務に駆り出されることになったのです。
出ることでも有名だったとか。