濃霧で視界真っ白… 着陸できる/できない旅客機なぜ発生? 背景に「超有能装置」
実はすべて対応しているわけではない「ILS」あれこれ
というのも、パイロットは、そのILSの精度ごとに資格を保有する必要があります。また、航空会社側も一定以上の精度(CATII以上)でのILS対応をするには、使用条件を満たし、日本国内の航空会社であれば国土交通省の認可を受ける必要があるのです。
パイロット側から見るとILSは、パイロットの前の計器盤に「姿勢指示器」という計器があり、そこに写る横と縦に棒が進入コースとのズレを表すことでガイドします。霧などで視界が著しく悪いときでも、パイロットはその表示の縦と横の棒がちょうど画面の中心で交わったキレイな「十字」となるように操縦(自動操縦が大半)することで、正しい進入コースで滑走路まで安全に辿り着けるというわけです。
ちなみに、成田空港でにおいても、すべての滑走路で「視界がほぼない」気候でも着陸できるILSを備えているわけではありません。成田の場合、第1ターミナルの向かいにある4000mのA滑走路の北側「16R」のみに「CATIIIb」を設置しています。
なお、このILSでの着陸、いまでは普通の人でも、家で「疑似体験」することができます。たとえばマイクロソフトのフライトシミュレーターなどが該当し、ILSでの進入のスタートラインから始まり、最後に通過するインナーマーカーを経たのち、急に滑走路が広がる、といった経験をシミュレーター上で積むことが可能です。ILSに乗ったら、「ローカライザー・キャプチャー」と発声しましょう。
【了】
Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)
成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。
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