東京の住宅街に潜む廃線「北王子貨物線」を巡る 鳴らない踏切 埋もれた線路
日本各地に残る廃線跡ですが、都内にもはっきりとしたものが存在。その一つが「北王子貨物線」で、踏切や線路が今も現地に残っています。この廃線跡の現状を見てきました。
都心からすぐそばにある廃線跡
鉄道が廃止になったあと、線路や鉄道施設などの遺構が残されたいわゆる「廃線跡」が、各地に存在しています。実は東京都内にも、廃線跡がいくつかあります。その中の一つが、北区に残る「北王子貨物線」の廃線跡です。
この廃線跡は、京浜東北線の王子駅から、北東の住宅地の中へ分岐していきます。駅から5分ほど歩くと、閉鎖された踏切が見えてきました。フェンスに囲まれた狭い一帯が、王子駅の方角から、高層マンションに向かって伸びていきます。雑草に覆われ、緩やかなカーブを描くこの細長い敷地が、北王子貨物線の廃線跡です。
北王子貨物線は、王子製紙(現在の日本製紙)が敷設した専用線を由来とします。1927(昭和2)年に国鉄の所有となった後も、生産された紙製品を輸送する貨物列車が走り続けましたが、2014(平成26)年に運行を終了しました。
かつてヤードがあった北王子貨物駅にはマンションが建ち並んでおり、一見しただけではかつての面影はありません。しかし現地を歩いてみると、当時の線路が路面に埋められた形でそのまま残っています。中には、「8:10」「9:50」……といった文字が刻まれた銘板が、路面に埋設されています。これは貨物列車の通過時刻。この地と貨物線の関わりをしのぶ光景となっています。
現在、フェンスに囲われたままになっている廃線跡の再活用について、具体的な話はまだありません。神奈川県大和市では2021年3月、米軍厚木基地の専用線跡が完全に撤去される見込みです。時代を越えて鉄路の記憶を伝える廃線跡ですが、残された時間はさほど長くないのかもしれません。
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まだ各地に「廃線跡」は増えそうですね。