凄いぞ米海兵隊の新攻撃ヘリAH-1Z「ヴァイパー」ほぼ新造でも「AH-1Wの改修です」ナゼ?

「これは改修です」95%も違うのに新規開発と言わないワケ

 新規開発の場合、仕様書を作ってメーカーを募りトライアルとコンペを行わなければなりません。しかも開発されたものが海兵隊の運用に適したヘリコプターに仕上がる確証はなく、最悪、開発中止になってしまう可能性もあります。

 しかし「改修」であれば、AH-1シリーズの開発元であるベルと契約し、開発を任せることができるほか、海兵隊の要求も伝えやすくなります。またアメリカ議会も機体性能を上げてコストを下げる一石二鳥の策として、改修ならばと予算を認可した模様です。そのため海兵隊、メーカー、議会の三者は、ほぼ新造機と認識しつつも、「改修」とあえて言ったように思われます。

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AH-1Z「ヴァイパー」とAH-1W「スーパーコブラ」の比較写真。上がZ、下がW。メインローターやテールローター以外にも機首のセンサーなど相違点がある(画像:アメリカ海兵隊)。

 似たような例は、最新の大型輸送ヘリコプターCH-53シリーズにもあります。アメリカ海兵隊はCH-53E「スーパースタリオン」の後継としてCH-53K「キングスタリオン」を開発しました。CH-53Kは型式などから判断すると既存のCH-53Eの改良型のように感じますが、フレーム含めて一から設計された新造機です。これもまた開発期間の短縮とコスト低減のための“方便”のようです。

 なお洋上で運用することから、もちろんAH-1Zには塩害対策のコーティングが施されています。このコーティングは陸軍機であるAH-64「アパッチ」にはありません。このような海兵隊特有の仕様が施されていながら整備性は向上しているため、性能を別にして運用コストだけで見ると、アメリカ陸軍のAH-64Eより海兵隊のAH-1Zの方が低く抑えられるようです。これらの点も海兵隊がAH-1Zを調達するひとつの理由でしょう。

【了】

【写真】AH-1Z「ヴァイパー」4枚ローターも折り畳めばコンパクト

Writer: 斎藤大乗(元自衛官ライター/僧侶)

木更津駐屯地で5年間ヘリコプターと共に暮らした元自衛官。自衛官時代の経験を生かして雑誌やアニメに登場するヘリコプターの監修を行う。現在は実家のある日本最北の礼文島で僧侶をしながら記事を書いている。

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コメント

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1件のコメント

  1. よくある大人の事情というヤツですね。
    古くはF-86D、現在のF-18E/Fなんかもそうですし、
    畑違いの鉄道車輌ですが、国鉄EF64 1000番台も労組対策でEF64の改良型だお!!としたように、
    枚挙にいとまがありません。