実は超ハイテク!? 伝説の3発機ロッキードL-1011「トライスター」 何がスゴかったのか

先端技術いっぱいだったのに営業的には惨敗 その後は?

 先進の設備を備えた「トライスター」は、日本の航空会社に対しても激しい売り込みが展開されます。その結果、先述のとおりANAが採用します。一方、JAL(日本航空)は、3発ジェット機の競合モデル、ダグラス社のDC-10を導入。これは、DC-8以来、同社との関係性が深かったためといわれています。

 ただ、売り込み合戦は政治の世界にまで波及し、大規模な汚職事件「ロッキード事件」まで巻き起こしました。これは最終的に当時の政界トップである田中角栄元首相の逮捕にまで至ったことで、どうしても日本では、ロッキード製というだけでダーティなイメージが付いてしまったのも確かでした。

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JALが導入したDC-10(画像:JAL)。

 その後、ロッキードは、想定通りに売れなかったのか、はたまたイメージ悪化を防ぐためか(そんな玉ではないとは思いますが)、旅客機の開発から手を引いてしまいました。

 とはいえ、「トライスター」がエアライナーの一時代における象徴的な存在となったことには変わりありません。かつて筆者(種山雅夫、元航空科学博物館展示部長 学芸員)は、「着陸の難所」といわれた香港の啓徳(カイタック)空港で、最終進入を駐車場から見ているとキャセイパシフィック航空の緑の「トライスター」が一生懸命進入して、思い切ったように豪快に逆噴射して停止するさまを覚えています。

【了】

【超貴重?】「トライスター」のコクピットや機体を解剖

Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)

成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。

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コメント

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6件のコメント

  1. 子供のころ大きなジェット、静かなジェットとラジオでCMしてました。ANAの香港線で乗れましたが確かに静かでした。国際線を始めて間もなかったからか機長氏が楽しそうに左に見えますのが台湾島で…など機内放送で解説してくれました。惜しむらくは専門用語は知りませんが中4列分のハットラックがありませんでした。

  2. 全日空は最初DC10を導入する予定だった。
    それが急にトライスターになった。ロッキード事件がそうだった。
    まあ、その為にキャンセルになったDC10の29号機が格安でトルコ航空に流れて、欠陥により1974年にパリで大事故を起こしてしまったのは有名な話。

  3. 型式はエルテン-イレヴンと読むらしいですね
    デルタ航空のに乗ったことが有ります
    機体後部に第3エンジンがあるせいか、独特の騒音が有りました

  4. 墜ちない旅客機ってのが絶対的。そのせいでメーデーに出演できない。

  5. 尾翼からS字ダクトのボディラインが色っぽい素敵な飛行機でしたね。
    現在のトリトンブルー塗装もトライスターが最初に纏いましたし。

  6. コックピットの曲面ガラス処理が美しい