巨大な「円筒形の帆」起倒式ローターセイル 1万トン級フェリーで世界初の実用化 利点は
ヨーロッパの貨物船では、燃料使用量を抑えるため、風力を推進力に変える「円筒帆」を搭載する船が増えています。とはいえ構造上の欠点があったことから、その対策として世界初の起倒式が誕生しました。一体どんなものなのでしょう。
約100年のローターセイル史上、初の実用化
フィンランドの新興企業ノルスパワーは2021年1月20日(水)、ノルウェーの海運会社シーカーゴが運航するRORO船「SC Connector」(1万2251総トン)に、世界初となる起倒式ローターセイルを、2基取り付けたと発表しました。
ローターセイルは、日本語では「円筒帆」とも呼ばれるもので、帆船の帆(セイル)のように風を推進力に返るための装置です。形が筒(ローター)状であることから、そのように呼ばれます。
原理としては、ボールを投げたり蹴ったりするときに、ボールに強い回転を加えると、その回転方向に引っ張られ、一種の揚力が働くことがあります。その力は「マグヌス効果」と呼ばれますが、それを船の推進力として用いることで、風力を前進する推力に変え、化石燃料の使用を低減させようというものです。
とはいえ、ローターセイルは、橋などをくぐる際には邪魔であるほか、船の重心位置を高めてしまうため、ローリング(横揺れ)やピッチング(縦揺れ)などの船体動揺に影響を与える懸念もありました。
そこで、ノルスパワーは、状況に応じて角度調整が可能な起倒式のローターセイルを開発、初の実用化にこぎ着けたのです。
なおRORO船とは、船体に車両が自走して出入り可能なスロープ(ランプ)を備え、船内も車両が収容可能な構造を採っている船のことです。
運航するシーカーゴによると、「SC Connector」はノルウェー西部とデンマーク、オランダ、スウェーデンおよびポーランドなどを結ぶ航路に投入されるものの、そこには複数の橋や送電線が横切っており、ローターセイルを搭載するのであれば、その下を通過するためにほぼ水平に倒せる必要があったとのこと。そこで今回、ノルスパワーの起倒式ローターセイルを採用したといいます。
発表によると「SC Connector」は、風が良好で天候も安定している場合、ローターセイルの推力だけで通常の航行速度を維持することができるそうです。とはいえ、まったくの無風状態ではただのデッドウェイトになってしまうため、前述の船体動揺への影響と合わせて、採用企業を増やすためには、より一層の技術改良が必要かもしれません。
【了】
シンガポールのセントーサ付近を航行の時も折り畳み厳守で。
亀頭式ローター