【空から撮った鉄道】ついでに空撮したマルーン色を纏った“ちょっと違う私鉄電車”たち
阪急の車両は創業時より伝統的にマルーン色を纏い、その色合いは落ち着いた色調です。梅田、十三、正雀工場、大山崎、神戸三宮、淡路と、関西方面の空撮で出会った阪急の姿を紹介します。
この記事の目次
・他社とは違う空気が流れているような……
・阪急初の空撮は京都本線
・翌年は大阪梅田駅→十三駅→正雀工場へ
・神戸三宮駅は仮設ビルが解体される前に
・鳥の目線だと高架化工事の全容は一目瞭然
【画像枚数】全21枚
他社とは違う空気が流れているような……
私の勝手なイメージですが、「阪急電車」と聞くと、閑静な住宅街を結び、宝塚歌劇があって、電車は創業時からのマルーン色を纏い、どこか奥ゆかしい雰囲気が漂ってくる。そんな感じがします。そういえば若い頃に大阪南部へ住んでいたとき、「阪急電車」は滅多に使いませんでしたが、たまに乗る時は、なぜか背筋を伸ばすような気分で乗車しました。
先入観からなのか、電車の色や設備、沿線の雰囲気などから感じたのか。他社とは違う空気が流れているような……、気のせいかもしれません(笑)。この前、友人が上梓した『関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか』(伊原 薫著、交通新聞社新書)を読み、ちょっと違うと感じていることがなんとなく分かりました。
さて、私の中では“ちょっと違う私鉄”というイメージの阪急は、なんと言ってもあの落ち着いたマルーン色が特徴です。焦茶色でもなく栗色でもなく、赤みと深みのある色。車両は伝統としてこの色を纏い、正面には車番が大きく明記されています。その姿は幼少期に見た鉄道絵本でも目に留まりました。決して派手さのないシンプルな電車ながらも、車体がワックスがけしたように輝いている姿に惹かれたのだと思います。
車体が輝き、独特な風味の車体色というのは、撮影するときに悩みます。目で見た時の色合いと異なることもあります。それは上空からでも同じで、マルーン色が地面や周囲の情景に溶け込み、車両が目立たないこともしばしば。
派手さのない深みのある色調で目立たないというのは、阪急らしいとも言えましょうが、空撮する身にとっては少々難儀しました。なので、晴れ間で空撮するよりも曇天のほうが、車体のディティールがなんとか現れ、色合いも深みのある雰囲気がでてきました。
阪急は、関西の空撮のついでに撮ったので、全線は網羅していません。冒頭に述べたように、梅田、十三、正雀工場、大山崎、神戸三宮、淡路で撮影しています。
阪急初の空撮は京都本線
初めて阪急を空撮したのは2012(平成24)年のこと。京都の梅小路蒸気機関車館(当時)へ向かう途中の、京都本線大山崎駅付近です。東海道新幹線の700系上り列車と阪急が並走するシーンを撮影しました。
大山崎駅付近は新幹線と並行して京都本線の高架橋があります。何気ない並走シーンですが、ここは1963(昭和38)年の東海道新幹線建設時、新幹線のみ高架橋にすると軟弱な地盤ゆえに地盤沈下をする恐れがあり、京都本線も併せて高架化しました。
工事では、新幹線高架を先に建設し、京都本線はその後に建設。京都本線の高架工事中は、仮線として暫定的に新幹線高架橋上を阪急が走りました。並走区間に暫定使用の名残はありませんが、そんなエピソードを思い出しながらの空撮でした。新幹線と阪急双方の車両が並走するところを撮りたく、たしかそのときはある程度ダイヤを調べて狙いました。
翌年は梅田駅→十三駅→正雀工場へ
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Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。