ハデさには欠けるかもしれない多用途ヘリUH-1Jが陸自のヘリで最も多く配備されるワケ
兵器、あるいは装備品には、ひとつの性能に特化したものが見られる一方、「多用途」をうたうものも見られます。そのひとつ、陸上自衛隊のUH-1Jは、その数の多さと使い勝手の良さから、災害派遣の現場でもよく見られるヘリコプターです。
災害派遣の現場で「多用途ヘリ」UH-1Jは…?
2019年10月12日、猛烈な勢いを保ったまま関東に上陸した台風19号は、各地に甚大な被害をもたらしました。
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その3日後の10月15日、東京都から、道路の崩壊によって孤立してしまった集落に対する救援物資空輸の要請を受けた陸上自衛隊第1師団第1飛行隊は、預かった都の救援物資をUH-1Jに搭載し、東京都立川市の立川駐屯地から同奥多摩町に向けて飛び立ちます。このとき、第1飛行隊で写真陸曹として勤務(任期付自衛官)していた筆者(武若雅哉:軍事フォトライター)も、この一連の災害派遣を記録するべく、同任務に従事することとなりました。
立川駐屯地を飛び立ち、しばらくすると、谷の合間に目的地となる空き地が目に入りました。長辺が30mほどの、小さな三角形の駐車場です。UH-1Jが降りるには十分な広さでしたが、北側は切り立った斜面、東側と南側には電線が張られており、少しの操縦ミスで機体と障害物が接触する恐れのある場所でした。そのため、機長はホイストによる荷降ろしを選択、先に要員をホイストで降下させ、次いで救援物資を降ろしました。
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この日は1往復のみでしたが、その2日後には総勢4機のUH-1Jが計8往復する大規模空輸が行われることになります。
15日の教訓から、UH-1Jを安全に着陸させるスペースが必要とのことで、自治体と自衛隊が協議を行い、前回の目的地から直線距離で200mほど離れた採石場が、新たな着陸地点として選定されました。
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UH-1Jが着陸し側面のドアが開かれると、東京都の職員や消防団員などによって、大量に積まれた物資がドンドン降ろされて行きます。
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こうして多くの物資を届けたUH-1Jですが、これがCH-47J/JAであれば一度の空輸で済んだかもしれません。しかし、この場所は元採石場ということもあり、平らな場所は小さく、周囲は崖に囲まれていたため、大型のCH-47J/JAの着陸には不向きでもありました。
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