そっくりなのは合理性から!? エアバスA380にあまりにも似た幻の超大型機「MD-12」

幻の「MD-12」 そっくり機の「A380」と比べると?

 一方で当時、エアバス社は新興の航空機メーカーであったものの、A300やA320の成功から快進撃を始めたところであり、長距離国際線も飛べるようなA330やA340の開発・生産も手掛けるようになりました。そのようななか、さらなる飛躍を求めて1990年中頃からA3XXという超大型旅客機の開発にも着手します。

 A3XXの開発は、奇しくもMD-12の計画が公になった直後で、エアバス社は一時、ボーイング社との提携も模索したものの、最終的には単独で開発を進めます。これが、2005(平成17)年に初飛行したA380です。ちなみに一説には、A380の「80」は800人乗りから来ている、というハナシもあります。

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MD-12計画とエアバスA380の諸元比較(乗りものニュース編集部作成)。

 A380は双発機全盛時代にデビューしましたが、その巨大さからパワー不足を回避するためエンジンは四発です。胴体は、ボーイング747と比べて真円に近い形になっています。つまり、MD-12とコンセプトが近いので、形状もそっくりになってしまったといえるでしょう。実はA380の方が、計画時のMD-12と比べると、全長、全幅とも約10m程度大きいのですが、外観のアウトラインは極めてよく似ていました。

 MD-12は、パリやファンボロ(イギリス)のエアショーで配布するための簡単な小冊子が作られています。これによるとMD-12には、席数が多いタイプ、長距離タイプ、胴体延長タイプ、そして双発タイプなどまであり、各国の航空会社の要望にあわせて様々なモデルを提案できるようにしていたようです。もしかすると席数の多いタイプは、日本の国内線に向けて提案することを前提にイメージした可能性もあるかもしれません。

 ちなみに、ポーランドには実際に空を飛んだMD-12が存在します。ただ、こちらは1959(昭和34)年に初飛行した四発レシプロ輸送機で、3機しか製造されていません。

【了】

【二度見不可避】A380そっくり機「MD-12」のイメージ

Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)

成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。

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コメント

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4件のコメント

  1. 1933年初飛行したMIAG社の軽飛行機にMD12がありますね

  2. MD-12なにかの本で見た記憶はある。

    総二階型だと、もう30年以上前のホビージャパンの別冊のウルトラシリーズのメカを扱った本で、大型輸送機として総二階型になった747の図があったのを思い出した。
    全体がオニギリ型のままの総二階だった。
    なつかしいな。

    しかし、実際そのタイプで製造してもエアライン的には使いにくいかな?

  3. まぁMD-12やA380、ソニック・クルーザーの話が出た頃はそれこそ「ハブ&スポーク」最たる時期でそれこそ関空も相応しい作りをしてたわけで。

    アメリカ同時多発テロ事件などによる需要の落ち込みやらLCCの台頭による「Point to Point」な進化、更にエンジン強化による2発機進化、環境問題等によって4発機やら超音速機はあえなくって感じですかね。

  4. 見た目にハッキリ縦長の胴体と分かるA380とは対照的に、
    MD-12の胴体寸法は、高さ7.4 m、幅8.5 mで、
    真円ではなく幅広の胴体を採用する計画でした。
    胴体断面を真円にすれば、確かに応力が一部にかかるのを避けることができ、
    構造上は有利ですが、反面胴体直径が大きくなればなるほど屋根裏のスペースが無駄になり、
    空気抵抗が増えます。
    それを避けるため、MD-12は胴体を幅広にしてアプレストを増やしました。
    少しでもキャビンを広げ、屋根裏の無駄スペースを潰そうとする意図です。
    一方、747のおむすびの凹んでいる部分は、丁度二階席の床を支える桁が入っており、
    ここで集中する応力を受けるという、非常に巧みな設計になっています。
    どちらも単に造りやすいからと真円で済ますのではなく、
    空気抵抗、重量等、トータルでのメリットを考慮し、
    MD-12は総二階建てキャビンにしよう、747初期型ではコックピット部分を二階にしよう、
    という、それぞれの目的に適った合理的な設計と言えます。