世界初のジェット旅客機「コメット」の悲しき顛末 相次いだ悲劇の原因は革新的すぎたから?

世界初のジェット旅客機としてデビューしたデ・ハビランドDH.106「コメット」は、相次ぐ航空事故で悲しい運命にもてあそばれた旅客機でもあります。革新的な機体であったとは言えるものの、何がまずかったのでしょうか。

相次ぐ事故の原因は何だったのか

 実はこの異常に早い金属疲労は、客席の窓が大きな要因だったと記録されています。「コメット」の窓は四角に近いものでした。つまり、窓の角が鋭角だったのです。「コメット」の場合、上昇、降下を繰り返すうちに、この角の部分に力が集中して負荷が生じ、これが積み重なって先述の航空事故が発生したとされました。

 その後のジェット旅客機の窓が全て、丸に近いアールが取られているのも、この「コメット」の教訓を生かしたものなのです。

 デ・ハビランド社でも、窓を丸くした改修タイプ「コメットIV」を1958(昭和33)年にデビューさせます。ところがジェット旅客機としては「コメット」より後進となる、アメリカ製のライバル機、ボーイング707やダグラスDC-8は、この対策を施したうえで、キャパシティや後続距離も向上させたモデルとして開発されていました。こういった経緯により、コメット1からほぼ独壇場だったジェット旅客機におけるイギリスの優位性は、1960年頃までに無くなっていきました。

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「コメット」以来、丸い窓は2021年現在も基本的に引き継がれている(2021年、乗りものニュース編集部撮影)。

 機体を購入するエアラインとしても客商売ですから、過去に事故歴のある機体より、より大型で乗客を多く乗せられ、かつ長距離を飛行できる機種を選びました。「コメット」の初期発注者であるBOAC(英国海外航空。現在のブリティッシュ・エアウェイズ)までもが、コメットIVからボーイング707に更新してしまったのです。

 革新的な航空機は、飛行高度や飛行距離などの運用方法など様々な条件を想定して設計が進められるものです。もちろん設計者は完璧を期するのですが、実際に運用してみると、どこかに想定外の事象が発生することもあります。しかし、何か想定外の案件が発生した場合でも、いかにしてその要因を探求し、対策を実施していくかが、筆者は重要と考えます。

 ただ、「コメット」がジェット旅客機のパイオニアとなった点も、疑いようのない事実です。個人的には、コメットのすらっとした鼻先が好みです。どことなく、エアバスA350を見るとどこか似ていると思うのは筆者だけでしょうか。

 ちなみに、そのほかに「コメット」と呼ばれた飛行機には、ドイツ空軍で第2次世界大戦終盤に導入された、ロケットエンジンを搭載した全く新しい戦闘機Me163「コメート」や、日本海軍が発注した艦上爆撃機「彗星」などがあります。前者は革新的設計と引き換えに扱いが難しく危険性も高かったことから「恐怖の彗星」と呼ばれ、後者は水冷エンジンの扱いが当時の日本人には難しく、最終的にエンジンを違うものに変えることになりました。「彗星」の名がつけられた飛行機の多くは、それぞれ革新的ゆえに、悲劇となってしまった側面があるといえるでしょう。

【了】

※一部修正しました(5月23日9時09分)。

【貴重写真】「コメット」の試作初号機

Writer:

成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。

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