「羽田新ルート」初の時間外運用は正しかったのか? パイロットの判断 横たわる騒音問題

運用開始から1年が経過した「羽田新ルート」。米国の旅客機が初めて時間外運用を実施し、一部で再び議論の的になりました。騒音の問題に起因する運用時間のルールを犯した事象であったためですが、パイロットはどう判断したのでしょうか。

パイロットの判断は正しかったのか?

 今回ユナイテッド航空のパイロットは緊急状態の宣言を出し、航空機運航の最高責任者として、航空管制官に対して羽田空港で最も長いC滑走路(3360m)への着陸を要求しました。

 その原因は、前出の通り機体トラブルです。不具合をきたし宣言の理由となったスラットをはじめ、フラップ、エルロン、エレベーターなど、飛行機の翼面に付いていて、機体の動きを制御する部品を「フライトコントロール系」と呼びますが、これらの機能が失われると、着陸時の減速や急激な風の変化への対応が困難になり、着陸の難易度は格段に上がります。

 当該機のパイロットは、やや高速気味の着陸でも滑走路をオーバーランしないよう備えるべく、着陸したい滑走路を、ある意味“問答無用に”選択できる権限を得る緊急状態の宣言を選択したものと考えられます。

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「羽田新ルート」で羽田空港に着陸する旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。

 このルートを時間外に取ったことがルール違反かといえば、そうでもありません。「緊急状態又は避けがたい事態にある場合」は羽田新ルートの使用規定の例外に当たるからです。

 なお今回の機材は、低騒音とCO2(二酸化炭素)削減技術の結晶とも言えるボーイング787型機であり、着陸まで約5分前の3000フィート(約915m)付近までは、騒音防止法で定められた基準値以下の騒音レベルで飛行できます。

 サイレンが煩いから、という理由で救急車の進路を塞ぐ人がいないように、騒音軽減を図るために運用時間を絶対に守ることと、人命を天秤にかけて良いはずがない――今回のユナイテッド航空の事象から筆者(タワーマン:元航空管制官)は思うのですが、この論争による騒ぎは静まる気配はないといえるのかもしれません。

【了】

【さっと見】「羽田新ルート」の航路&機内からの景色

Writer:

元航空管制官。航空専門家。管制官時代は成田国際空港で業務に従事する。退職後は航空系ライター兼ゲーム実況YouTuberに。飛行機の知識ゼロから管制塔で奮闘して得た経験をもとに、「空の世界」をわかりやすく発信し続けている。新書「航空管制 知られざる最前線」(2024/5/28河出書房新社)

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