西九州新幹線 佐賀未着工区間が進展 フル規格での建設試算など「三つの宿題」とは

国側にできた「三つの宿題」

 今回の協議では国側に、いわば「宿題」が三つできました。

 ひとつ目は、先述のフル規格による3ルート試算。二つ目は、在来線についてです。

 在来線の将来について議論することはフル規格での建設が前提になってくることから、佐賀県側は議論できないという立場を示していますが、今回の協議では、JR九州と国が議論した内容を聞かないわけではない、としました。

 これに対し国交省の足立課長は、地域に密着している自治体の意見を聞かないといけないとしつつも、「進展」と考え、今後、調整をしていきたいとのこと。

Large 210601 nishikyushu 02

拡大画像

開発が断念されたフリーゲージトレイン(恵 知仁撮影)。

 三つ目は、線路の幅が違う在来線と新幹線、その両方を走れるフリーゲージトレインについてです。国が開発を進めていた最高速度260km/hのフリーゲージトレインは開発が断念されましたが、今回、佐賀県側から「最高速度200km/hではどうか。それなら所要時間もあまり変わらないのではないか」という提案がありました。

 国交省の足立課長は「技術担当に確認する」としましたが、もし技術的に200km/hなら可能となっても、別の懸念が発生します。最高速度260km/hでも、最高速度300km/hの山陽新幹線へ乗り入れるのは難しいと2016年にJR西日本の来島社長(当時)が話しており、「全国新幹線ネットワーク」の効果を発揮できないことです。

 国交省の足立課長は、「コロナ禍で変わることがあっても、人が移動して色々な出会いをしたい、体験をしたいというのは変わらないと思いますので、少しでも早く実現するために議論を加速させたい」と話しています。

【了】

【画像】長崎出身 蛭子能収さんが描いた「西九州新幹線」の想像図

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

4件のコメント

  1. 新鳥栖〜武雄温泉、ミニ新幹線ではまずいのですかね?佐賀駅付近に新たに線路を敷く用地はないように見えますが?

    • それは100%できませんね。長崎県と佐世保市、JR九州は2019年3月28日(木)、長崎県庁で佐世保線等整備検討委員会を開催し、佐世保線の高速化に向けて、地上設備の整備や振り子型車両の導入などについて合意したので、もし新鳥栖~武雄温泉をミニ新幹線にするとこの合意を破棄しなければいけません。

    • 三線軌ないし四線軌なら可能ですがいろいろ難癖付けてやらないでしょうね。JQとしてもミニ区間の在来線施設切り離せない上に新幹線料金取れないのはいやでしょうし。
      それにミニ新幹線(新在直通)となると新鳥栖での分併が発生しますが、分併での遅延が山陽区間に波及すればそのまま東海道区間まで波及しかねないのでJR東海が黙ってないでしょう。

      個人的には西九州ルートの需要を考えたら山陽直通列車は鹿児島フルと西九州ミニでの併結運転がベストだとは思いますが。開業当初のスタートダッシュはすぐ萎むでしょうし。

    • 需要ではミニ新幹線車両の併結でも十分でしょうが、それをやると今度は既設のホームドア(自分が知る限りは新神戸・岡山・広島)・可動式移動柵の改造、さらに新鳥栖のホームがフル規格8両限度の場合ホーム延長が追加投資として求められます。特に新鳥栖のホーム延長が必要となればその費用は決して小さな金額ではありません。
      その投資に見合うだけの収入が見込めないので、将来の車種統一を視野に入れてN700S系を導入し、本音はフル規格と言うことを暗に示していると自分は思っています。そうでなければ、佐世保線の特急を高速化するという合意を地元とするなんて考えられません。