中部空港に滑走路もう1本→発着数1.2倍…なぜ2倍にならない? 管制官からみるカラクリ
滑走路2本化のベストレイアウト でもなかなかそうはいかない…
逆に、2500フィート以上離れた配置になると、一定の高度差なく3マイル(約5.5km)以内に近づけてはいけないことに変わりはありませんが、異なる滑走路からの出発機どうしのあいだに120秒の間隔を取る必要はなくなります。なお、2500フィート以上離れた滑走路のレイアウトだと到着機にもメリットがあり、平行進入方式という特別な条件を適用することができようになります。
これは、平行滑走路に同方向から着陸する場合に、異なる滑走路に向かって直進する到着機間に保つ距離を3マイルから2マイル(約3.7km)に縮めることができるもの。最大限に上手に処理したとき、到着機は2マイル置きにジグザグとした形で誘導されます。つまり、滑走路2本を2500フィート離すことができれば、2倍とまでいかないまでも、それなりに処理能力の向上が期待できるのです。
そして、滑走路中心線間の距離が、4300フィート(約1310m)以上離れた場合には、レーダーの3マイルの原則や、平行進入方式の2マイルの制限すら不要になります。これが、羽田空港、成田空港などで実施されている完全な同時着陸、同時離陸が実施できる条件です。つまり、滑走路2本で、1本体制のときと比べて倍近い機数をさばけるようになるような、ベストな滑走路レイアウトということです。
であれば、せっかく作る滑走路を最大限に活用するため、どこの空港も2本目の滑走路は、1本目より4300フィート以上離して作りたいところですが、そうもいかない事情があります。
ターミナルビルを挟むように滑走路を設置できる用地があれば、自然とそれくらいは離れるものですが、用地があったとしても、すでに誰かが所有している土地取得の交渉や手続きの難しさはありますし、便数が倍になることを見越して一気に拡大するような大博打はなかなか打てません。そういった経済面の理由からも、既に作られたターミナルビルを拡張して、滑走路間の距離は短くても2本にすれば少ない土地で済むし、便数も微増させられるという手段を選択しているということになります。中部空港も、処理能力拡大と、埋立に掛かる莫大な費用の狭間にいるのでしょう。
【了】
Writer: タワーマン(元航空管制官)
元航空管制官。航空専門家。管制官時代は成田国際空港で業務に従事する。退職後は航空系ライター兼ゲーム実況YouTuberに。飛行機の知識ゼロから管制塔で奮闘して得た経験をもとに、「空の世界」をわかりやすく発信し続けている。新書「航空管制 知られざる最前線」(2024/5/28河出書房新社)
決定したのは土砂処分場用地の建設であって、30年かけて埋め立てた後どうするかは未定。
滑走路増設が決定したかのようなミスリードを誘う書き方は悪質と言わざるを得ない。
700フィート(210m)
2500フィート(760m)
こんなんで元管制官...ワラわせる!
そのくらいの能力増強効果しかないのだったら、航空需要が減退している今、作らない方が吉かもわかりませんね。