旅客機を「最期の地」へ飛ばすパイロット、心境は? ANA主力機整理の裏側「まだ飛べた」
新型コロナ感染拡大の影響で、ANAでは長距離国際線の主力機だった「777-300ER」を13機、一挙に退役させました。この退役フェリーを担当したパイロットの心境は、どのようなものだったのでしょうか。惜別の念だけではない、ある心の動きもあったようです。
「涙ぐむ人も…」 別れを惜しむANAの777パイロットたち
新型コロナウイルス感染拡大にともなって、ANA(全日空)では、固定費を削減するため、やむを得ず旅客機の編成の大幅な見直しを図られることになりました。とくに同社で、おもな”整理対象”となったのが、これまで長距離国際線の主力機であったボーイング777-300ERです。2020年度には13機が運航を終了し、順次日本を離れ、2021年7月15日(木)には、そのラスト1機「JA780A」が日本を離れています。
これらボーイング777-300ERが日本を離れ向かった先は、アメリカ・カリフォルニア州のモハーヴェ空港。役目を終えた旅客機たちが多数安置されている場所で、「飛行機の墓場」として、航空ファンには広く知られる土地です。ここに向け”最後のフライト”を実施する同社のパイロットは、どのような気持ちでモハーヴェ空港へ行きつくのでしょうか。
「まだまだ飛べるのに……コロナがなかったら、2020年の羽田の発着枠拡張で、とてつもなく大活躍する予定の飛行機だったのです」。7月13日(火)にモハーヴェに向かった「JA779A」のフライトを任されたパイロットはこう話しました。この機は2007(平成19)年導入。まだ導入から15年も経っていない”働き盛り”でした。
その翌々日、JA779Aの数か月あとに導入された「JA780A」も退役フェリー(回航)を実施。この便を担当するパイロットは「とにかく寂しいですね。コックピットのなかは実はまだピカピカです」と惜しみます。
退役フェリーを担当するパイロットは、経験豊かな人が担当することが多く、そのため複数回この役割を担うことが多いようです。これまでの退役フェリーの様子について、経験したパイロットたちは次のように話します。
「着陸のときは『これが最後の着陸になるのだな』と思い、『優しく降ろしてあげなきゃ』と考えた記憶があります。最後は、『この機も置いて帰らなきゃいけないのか、もう一度飛べたらな……』と考えてしまいます」(JA779Aの退役フェリーを担当したパイロット)
「エンジンを切った最後の瞬間、『もうこの飛行機のエンジンを回すことはないのだな』と考えて、手が震えました。また、一緒にコックピットに座った同僚のなかには、涙ぐむ人もいましたね。本当になんともいえない気持ちになります」(JA780Aの退役フェリーを担当したパイロット)
一方で、モハーヴェ空港への着陸に、惜別以外の特別な感情を持つパイロットもいるようです。
コメント