新幹線工事でJR北海道に試練の時? 激変する札幌駅 稼ぎ頭の商業施設など次々と閉鎖
エキナカの魅力維持は鉄道にとっても死活問題?
新幹線の工事は7年もの長期間にわたり、JR北海道にとっても、“サツエキ”商業施設の競争力維持は業績へ大きく影響しそうです。また、工事区域にデッドスペース(用途のない空間)が生じることに対策をとっていく必要もあるでしょう。
駅北側の連絡通路や北口の商業施設もまた、在来線のホーム増設工事によって2021年9月いっぱいで閉鎖、迂回路によって構内から出るようになります。駅構内を東西に伸びるパセオが元の場所で営業を再開するのも、早くて2025年以降となりそうです。この間、駅構内での移動の流れが停滞すると、営業を継続するアピアや札幌ステラプレイスにとっても不利な条件となってしまいます。
一方、札幌駅以外の地区でも、新幹線の開通までに大型施設の開業が相次いで予定されています。南口の旧・札幌西武跡地(北4西3地区)に計画されているヨドバシカメラを核テナントとした高さ200m・地上35階の複合施設や、狸小路地区の旧・そうご電器本店跡地の水族館や商業施設が入居する122m・地上28階の再開発ビル、旧・すすきのラフィラ跡地(ニッカウヰスキー看板向かい)のスーパーやシネコンを軸にした複合施設などです。他にも札幌駅周辺では通り1、2本ごとに何らかの大規模な建て替えが進んでいます。
これらのエリアは、駅からすすきの付近までの「チカホ」「ポールタウン」(いずれも地下歩道)でつながっており、“サツエキ”からの移動は容易です。つまり札幌駅エキナカの商業施設は、工事期間中は不利な状態で「エキマエ(ヨドバシ)」や他地域との競争力を維持しなければなりません。
コロナ禍で鉄道需要が減退するなか、JR北海道にとって頼みの綱である商業施設の競争力低下は、近郊の鉄道利用者の減少にもつながりかねず、道内ローカル線の維持などにも影響を与えかねません。1952(昭和27)年開業の「札幌ステーションデパート」から“サツエキ”の活用に工夫を凝らしてきた札幌駅や現在のJR北海道にとって、工事期間中におけるエキナカの魅力維持は、大きな試練になるのではないのでしょうか。
【了】
※一部修正しました(9月22日10時35分)。
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
品川地下鉄も北海道新幹線札幌みたいに再開発と連動して高架駅や地上駅を立てたほうがいいよ。
JR北海道が新幹線に固執して何かやる度に収益を手放していくように見える。