システム導入で逆に不効率 目的と手段取り違えるな【ざんねんな物流DX #2/Merkmal】

システム導入が、業務の不効率を招くこともある

 私の知る倉庫会社では、複数のWMS(Warehouse Management System、倉庫管理システム)を導入している。荷主からそのWMSを使用するように指定されているからだ。確かに荷主の立場からすれば、倉庫会社と同じWMSを利用することで、入出庫や在庫など、各種のデータをやり取りする上でメリットが大きい。だが、倉庫会社側では、荷主ごとに異なるWMSを導入しているため面倒この上ない。

 この場合は、おそらく倉庫会社側には、WMS選択の自由がなかったと考えられるため、かわいそうではある。だが、倉庫会社側も、WMSが増え始めた時点で、社内業務の見直しを図り、共通化できる業務プロセスと、WMSごと、もしくは荷主ごとに異なる業務プロセスの切り分けと、業務標準化を実現するべきであった。

 結果、この倉庫会社では、荷主が増えるごとに、バックオフィス業務が必要以上に増大するという悪循環が生まれてしまった。

 ちなみに、このようなケースでは、異なるシステムを連携させることができるiPaaS(アイパース、Integration Platform as a Serviceの略)や、RPAを活用することで、業務改善を図ることが可能である(本稿のテーマと異なるため、詳細は割愛する)。

誤ったシステム導入を行わないために

 繰り返しになるが、システム導入は、生産性向上や業務改善のための手段でしかない。本来の目的を忘れ、近視眼になってしまうことで、目的と手段の本末転倒が発生する。

「目指すべきものは何か」。まずは、このスタンスを常に忘れずに、決してシステム導入が唯一無二の選択肢だと勘違いすることなく、目的の達成に必要なもの、そしてIT化を検討してほしい。

 なにしろシステム導入には、金額の大小はあれど金が掛かる。「せっかく導入したシステムだけどさ、全然使えないんだよ」なんて愚痴を聞くこともある。だかもしかすると、その原因はシステムの機能性や性能にあるのではなく、目的と手段を取り違えた結果なのかもしれない。

 さて、次回はいよいよ本連載の主テーマであるDXを考える。システム導入とIT化の関係が勘違いされがちなように、IT化(デジタル化)=DXだと思い込んでいる方も少なくないだろう。残り2回の連載では、物流企業が目指すべきDXを考えていこう。

【了】

提供:Merkmal
「Merkmal(メルクマール)」とは……「交通・運輸・モビリティ産業で働く人やこの業界へ進出したい人が、明日に役立つ気づきを得られるニュースサイト」として発足しました。MaaS、CASE、環境への対応、自動運転技術など、変革著しい交通・運輸・モビリティ産業にまつわる最新ビジネス情報を独自の視点で発信しています。

Writer: 坂田良平(Pavism代表)

Pavism代表。「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。物流ジャーナリストとしては、連載『日本の物流現場から』(ビジネス+IT)他、物流メディア、企業オウンドメディアなど多方面で執筆を続けている。

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