国のDX目標は現実的か? 必要なアイデア【ざんねんな物流DX #3/Merkmal】

先日発表された物流大綱(国土交通省)でも、「物流DX」なる言葉が繰り返し登場する。もはやバズワードと化している感も否めないDXだが、そもそもDXとはいかなる概念なのだろうか。

システムの開発・外販をする物流企業の例

 私はかつて、配車システムを自社開発した運送会社に在籍していた。大きな会社ではない。従業員30人弱の中小企業である。それまで輸送ビジネスしか行ってこなかった運送会社が、システムの開発と販売を行うのだ。これも、DXの事例である。

 運送会社や倉庫会社といった物流企業がシステムを自社開発した上で、それを外販することにはどういったメリットがあるのか。疑問に思った私は、他メディアにてこのテーマについて取材、考察したことがある。そして得たメリットが、以下である。

●システム開発・外販を行うことで、本業である運送業・倉庫業においても、顧客サイドから「この会社は他とは違う」という評価をもらうようになり、本業の営業にも潤う結果となる。

●自社の従業員においても、システム開発・外販が、自信やプライドの向上につながり、愛社精神を向上させる。また本業において、新たな取り組みを行う際にも、授業員のモチベーションが高く、積極的になる好ましい効果が見受けられる。

 運送会社在籍時の私は、飛び込み営業をしていた。1年半で回った運送会社や倉庫会社は、3000社を超える。「荷物ありませんか?」と会社の門戸を叩くのと違い、「配車システムも自社開発しておりまして……」と切り出すと、相手の反応が明らかに違った。おもしろがられ、社長や役員などの経営層につないでもらえることもしばしばだった。

 物流ビジネスは、典型的な労働集約産業であるといわれる。運送ビジネスでは、その運送会社に属するトラックドライバーの頭数、トラックの積載量の分だけしか、ビジネスを生むことができない。倉庫ビジネスでも、基本的には自社倉庫のスペースに応じたビジネスしか展開できない。

「いや、利用運送もあるだろう?」――もちろんそうだ。だが、ビジネスの原資としてトラックドライバーの頭数や、トラックそのものが必要となることには変わりない。

 だが、物流企業がシステム開発・外販を始めると、その枷はなくなる。システムを売るということは、仕組みを売ることだ。そして、仕組みを売るビジネスには、在庫がない。売りたいだけ売ることができる。

 実際に、運送、もしくは倉庫の営業を行った経験がある人には「売りたいだけ売ることができる」ことの迫力と自由さは、きっと理解してもらえるだろう。

すべての企業がDXを実現することなど不可能

 国土交通省が2021年6月に発表した物流大綱では、物流DXに関するKPIが設定されている。

●物流業務の自働化・機械化やデジタル化に向けた取組に着手している物流事業者の割合

→100%(2025年度)

●物流業務の自働化・機械化やデジタル化により、物流DXを実現している物流事業者の割当

→70%(2025年度)

 しかしこのKPIは到底無理だ。いくら目標にしても、チャレンジが過ぎる。もし本気でこれがKPIとして適当だと思うのであれば、国交省における物流DXの定義が間違っているとしか考えられない。

 DXというハードルは、とても高い。先に挙げた現実的なDXにしても、着手することすら難しい。

 なぜならば、DXとは手順を踏めば必ず達成できるような安直なハードルではないからだ。DXに挑もうと思ったら、必死になって頭をひねり、あなたの会社だけの、競合他社を凌駕するようなアイデアを考え出さなくてはならない。現実的にみれば、必死に挑んでも結果として実を結ばぬケースがほとんどだと思う。

 だがそれでも、私は世にあるすべての企業に、DXに挑んでほしいと考えている。その理由は、次回に持ち越そう。

【了】

提供:Merkmal

「Merkmal(メルクマール)」とは……「交通・運輸・モビリティ産業で働く人やこの業界へ進出したい人が、明日に役立つ気づきを得られるニュースサイト」として発足しました。MaaS、CASE、環境への対応、自動運転技術など、変革著しい交通・運輸・モビリティ産業にまつわる最新ビジネス情報を独自の視点で発信しています。

Writer:

Pavism代表。「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。物流ジャーナリストとしては、連載『日本の物流現場から』(ビジネス+IT)他、物流メディア、企業オウンドメディアなど多方面で執筆を続けている。

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