日本外交の勝利? ロンドン軍縮条約での巡洋艦保有量 計算したらアメリカ上回った!

古鷹型重巡を駆け込み建造した意味とは

 同じ日本でも、ワシントン条約から7年後のロンドン条約において生まれた排水量上限1万トン(実際は1万980トン)の妙高型重巡洋艦は、防御力に優れていました。主砲も古鷹型が最大射程2万4000mの砲6門だったに対し、最大射程2万9000mの砲10門と、攻撃力にも大きな差がありました。

 なお、ワシントン条約の時点で、アメリカからは補助艦も排水量ベースでの比率制限(全艦種6割)が提案され、日本は同意していました。この日米の同意は、最終的に他国の対立で盛り込まれることはなかったものの、その部分では日米で考え方は一致していたのです。

 ただ、そのことによりロンドン条約の日米交渉時に「日本は補助艦7割というが、ワシントン条約時には補助艦も6割で同意していた」と、アメリカから指摘されています。

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「条約型重巡」とよばれた妙高型重巡洋艦の4番艦「羽黒」(画像:アメリカ海軍)

 ワシントン条約後に新軍縮条約が成立するのは明白で、そこで「アメリカの何割かの重巡」を保有する内容も予想できたのですから、最初から条約上限いっぱいの1万トン級重巡洋艦のみを建造すれば、高性能艦で揃えることができたでしょう。そう考えてみると、あえて低性能の古鷹型巡洋艦を、慌てて建造しても旨味は少なかったのではないでしょうか。

 ちなみに、ロンドン条約は、保有する軍艦を排水量ベースで比率化し、国ごとに軍艦保有数を決める形の軍縮条約でした。なお、重巡洋艦のみ「アメリカ18隻、イギリス15隻、日本12隻」と保有隻数も明示されていました。

 アメリカは、排水量をベースとして7割の重巡洋艦を求める日本に「排水量では6割だが、保有隻数ベースなら、アメリカ18隻の67%である12隻を保有しており、ほぼ7割」と反論しました。イギリスも日本案だと、対イギリスでは86%の重巡になると、反対でした。

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コメント

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2件のコメント

  1. >>日本海軍と世論(当時の新聞は軒並み7割死守論を展開)は「重巡6割では国防が成立しない」と強い不満を抱きました。

    当時も今も元凶はマスコミだというのがよくわかるよね。
    ここでマスコミが煽って海軍の青年将校が禍根を抱くようになり、これが5.15事件へと続いて行くんだよね。
    もしここでマスコミが煽らなければ、もしここでマスコミが軍縮成る、これで世界的な衝突を回避できる、と諸手で喜ぶ論調を展開したら、5.15事件はなかったかもしれないわけで、マスコミは気軽に政府批判を展開しただけと嘯くかもしれないが、どう見てもこ政情不安定にした火付け役をやってるよね。

  2. この時代、何故日本の軍部のトップは、逆転の発想が出来なかったのか?対英米7割という補助艦保有を譲れないということに、拘だわりすぎだった。当時の日本の国力や、経済力で本当に対英米7割もの海軍力を保持・運用できるだけの力が日本に無かったし、山本五十六の盟友堀悌吉の主張した通り、英米は、日本海軍の1.4倍しか保有できないという足枷を嵌られるという発想が出来ていたら、、、あるいは、歴史は変わっていたかもしれなかったのですが、、、やれ、統帥権干犯などという、イケイケどんどんだけに進んだから、その結果がどうなったか、、、現代にも大きな教訓を示していると思うのですが、、、