未来の戦車か先祖返りか? 今後を占うかもしれないロシアのBMPT「ターミネーター」
現代戦車の戦い方は基本、戦車対戦車を想定していますが、その最初期は歩兵相手を想定したものでした。ロシアのBMPTは、まさにそのコンセプトで作られた、新しいタイプの戦闘車両であり、戦車という兵器の明日を占う存在かもしれません。
あの映画にちなんだ名前? 現実世界に作られた「ターミネーター」
「ターミネーター」といえば、SF映画に登場する対人戦闘用サイボーグが広く知られますが、21世紀に同じ名前の対人兵器が登場しました。ロシアが「戦車でも装甲兵員輸送車でもない新カテゴリの兵器」と主張する「BMPT(戦車支援戦闘車)」の名称です。ちなみにロシア語の発音だと「テルミナートル」になります。チェチェン紛争で歩兵の携帯対戦車火器により自軍戦車が損害を被った戦訓を受け着想された、「戦車を掩護する戦闘車」というロシア独自のものです。
ロシアの「ターミネーター」はSF映画に登場するような未来的なイメージではなく、第1次世界大戦の、戦車という兵器が未だ黎明期だったころのものへ先祖返りしたように見えます。第1次世界大戦に登場した最初の戦車は特徴的なひし形の「マークI」で、味方歩兵の突撃を掩護するのが目的であり、つまり戦車の相手は敵歩兵でした。
第2次世界大戦期になると戦車の相手は戦車となり、大きな主砲、厚い装甲、早い足の戦車の開発競争が繰り広げられます。1939(昭和14)年の開戦から1945(昭和20)年の終戦までの6年間における、各国による開発競争での戦車の進歩ぶりには目を見張るものがあります。
現代の戦車は「走」「攻」「守」に加え「コンピューター化」が究極形に達し、進化の限界であるともいわれます。21世紀に入り、戦車対戦車のガチンコ勝負がほとんど起こっていない原因のひとつが、究極形の戦車同士による戦闘はコスパが悪すぎる、というものです。コスパの悪さから戦闘が回避されるなら抑止力として存在意義もありますが、兵器の変化はシーソーゲームであり、話はそんなに簡単ではありません。
そして、高コストの戦車に低コストで対抗する方法が生まれてくるのは自然の流れです。すなわち、歩兵が携行して扱える携帯対戦車火器や仕掛け爆弾、ドローンの台頭です。兵器は進化したものの、戦い方そのものは戦車VS歩兵という構図であり、前述したように、第一次世界大戦当時の様相へと回帰したように見えてきます。
戦車が市街戦に弱い事は第二次世界大戦時には判明していて、ドイツ軍が大口径臼砲を搭載した自走砲を実戦配備していたのは、建物を破壊して歩兵やゲリラの対戦車兵器から戦車を防御する事も視野に入れていたのは有名ですよね。
BMPシリーズも戦車と同伴して歩兵やゲリラからの攻撃に対処する事を目的として運用されていましたから、その発展系としては妥当ではないでしょうか。