未来の戦車か先祖返りか? 今後を占うかもしれないロシアのBMPT「ターミネーター」
誤情報に注意 BMPT「ターミネーター」開発から配備までの経緯
BMPTの原型オブイェークト787は1997(平成9)年にロシア軍の審査を受けますが、採用は見送られます。そのままクビンカ戦車博物館にお蔵入りかと思いきや、1998(平成10)年になって発注されることに。これを受け量産車の開発が始まるものの、その途上にロシア軍の装備調達計画を大幅に見直した、2009(平成21)年の「セルジュコフ(当時の国防相)改革」でまたも採用中止となります。外国から受注済だった少数が輸出され、2017(平成29)年にはシリア政府軍の装備が確認されており、内戦で使用されたようです。
シリアでの実績が認められたかは分かりませんが、再度ロシア軍はBMPTの採用を決め、2018年に先行量産車が取得されて国家審査を受けます。2021年12月には最初のBMPT中隊が編成されて、運用研究が本格化しているようです。
従来の戦車のように大火力を持つわけでもなく、歩兵戦闘車のように歩兵を搭乗させるわけでもありませんが、メーカーのウラル・ヴァゴン・ザヴォドは「BMPT1両で歩兵戦闘車6両と40名の歩兵から成る自動車化狙撃兵小隊1個分の戦闘力がある」とアピールしています。
ロシア国防省機関紙では、市街戦の対歩兵戦闘で戦車を掩護するという単機能的な使い方ではなく、野外での歩兵戦闘支援や多用途火力支援戦闘車として考えられているようで、戦車大隊(3個小隊、31両)には1個BMPT中隊(10両)を配属することが提案されています。2021年9月の「ザパト21」演習で戦車とBMPTの共同行動する様子が紹介されており、この考えを検証したのかもしれません。
ソ連時代は兵器の名称を基本、発表していませんでしたが、ロシアになってからの兵器ネーミングセンスは侮れません。最近姿を見せた新型戦闘機の「LTSチェックメイト」はなかなか秀逸だと思います。BMPT「ターミネーター」は機械が人間を追い詰めるSF映画から取っているとすれば、意味深です。
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Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
戦車が市街戦に弱い事は第二次世界大戦時には判明していて、ドイツ軍が大口径臼砲を搭載した自走砲を実戦配備していたのは、建物を破壊して歩兵やゲリラの対戦車兵器から戦車を防御する事も視野に入れていたのは有名ですよね。
BMPシリーズも戦車と同伴して歩兵やゲリラからの攻撃に対処する事を目的として運用されていましたから、その発展系としては妥当ではないでしょうか。