未来の戦車か先祖返りか? 今後を占うかもしれないロシアのBMPT「ターミネーター」
BMPT「ターミネーター」の装備は? そのルーツは?
いったん廃れた多砲塔戦車のコンセプトが復活する兆しを見せていることも、戦車の先祖返り傾向を感じさせます。BMPTの開発段階では、機関砲2門を2基の砲塔へ別々に装備し、ほかに機銃装備砲塔を2基と、計4基の砲塔を載せた試作車(オブイェークト781)も造られています。
アメリカのM1「エイブラムス」戦車にも、砲塔上に機銃の付いた遠隔操作武器システムを追加したバージョンがあります。つまり、多砲塔戦車の特徴である多方向に同時に火力を発揮したいというニーズが復活しているのです。
BMPT「ターミネーター」の武装は、一見して戦車とは様相が違います。T-90戦車の車体をベースとしていますが、大口径かつ長砲身の主砲は無く、30mm機関砲2A42を連装し、30mm自動擲弾銃を車体に2門、7.62mm機銃と9M120-1「アターカ」対戦車ミサイルを4発、搭載しています。対戦車ミサイルとはいったものの、これは戦車よりも、建物内に潜む敵兵を狙い撃ちするのが目的です。外部監視センサーが多いのも特徴です。ちなみに砲塔はひとつです。
アフガニスタンやチェチェンの戦訓で、対歩兵戦には大口径長砲身の主砲より、大きな射角が取れ連射できる多連装機関砲の方が有効であるとされます。アフガニスタンでソ連軍は本来、航空機を狙う4連装23mm機関砲装備のZSU-23自走高射機関砲を対ゲリラ戦に持ち出しました。高射機関砲なのに対空レーダーや対空照準装置が外されてしまった、自走対歩兵機関砲(?)バリエーションまで現れました。これが「ターミネーター」のルーツかもしれません。対空多連装機関砲で対人射撃はやりすぎ感がありますが、いかに戦車が歩兵を恐れているかの証左です。
戦車が市街戦に弱い事は第二次世界大戦時には判明していて、ドイツ軍が大口径臼砲を搭載した自走砲を実戦配備していたのは、建物を破壊して歩兵やゲリラの対戦車兵器から戦車を防御する事も視野に入れていたのは有名ですよね。
BMPシリーズも戦車と同伴して歩兵やゲリラからの攻撃に対処する事を目的として運用されていましたから、その発展系としては妥当ではないでしょうか。