「モハに給油」の違和感が物語る―進化する「鉄道」 燃料の20%は別のもの

「モハに給油」で給油された燃料 普通じゃなかった

「モハに給油」、私(恵 知仁:鉄道ライター)のようなおっさんの鉄道ファンには違和感もあるシーンだったのですが、その公開目的は、違和感の演出ではもちろんありません

 給油された軽油に別のものが20%、混ざっていました。次世代バイオディーゼル燃料です。

 廃食油からつくられたもので、燃焼するとCO2が発生するものの、その原料が成長過程で光合成によって大気中のCO2を吸収するため、燃焼時のCO2排出量は実質的ゼロ、というもの。

 JR東海は持続可能な社会の実現に向けた取り組みとして、CO2排出量の削減をはかっているそうで、先述したハイブリッド車両の製造もそのひとつですが、さらなる取り組みとしてユーグレナと組み、2022年1月から、次世代バイオディーゼル燃料の実用性検証試験を開始しました。

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「クモハ85-1」へ次世代バイオディーゼル燃料を給油(2022年2月9日、恵 知仁撮影)。

 今回、報道陣へ公開された「モハに給油」は、その取り組みの一場面として行われたものです。エンジン単体の試験では、100%次世代バイオディーゼル燃料を使っても問題なかったといいますが、そのコストや生産量を考慮し、ひとつの現実的な割合である20%にしているとのこと。

 ただやはり、次世代バイオディーゼル燃料の実用化に向けた課題は、そのコストと生産量だそうで、ユーグレナの尾立維博執行役員は「2025年の次世代バイオディーゼル燃料商業化に向けて粛々と取り組んでいく」と話します。

 ちなみに「次世代」の意味は、食料生産と競合しない原料を使っていること、分子構造が軽油と同じで軽油と同様に使えること、だそうです。

 JR東海は2月13日(日)以降、次世代バイオディーゼル燃料をモハに給油したHC85系を使い、紀勢本線で走行試験を行う予定。また今後、次世代バイオディーゼル燃料とあわせて蓄電池や燃料電池なども検討し、CO2排出量削減に向けて取り組んでいくといいます。

 違和感のある「モハに給油」、しかも給油するのはただの軽油じゃない――。時代が変わっている、進んでいることを実感した今回の取材でした。

【了】

【写真】「モハの給油口」がある場所&仲よさそうなキハ85系とHC85系

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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コメント

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2件のコメント

  1. 過去に軽油へ水20%近くを混ぜてエンジン動かす研究していた思い出。当時は燃料価格下落で研究中断。継続していたらモハには別の燃料が供給されていたのかも。

  2. 電気モーターというのはやめてほしいね。気色悪い。
    超音波モーターとか生物モーターとか特殊なものはあるけど電気で回すものは「モーター」でいいです。
    本文にディーゼルモーターとかガソリンモーターとか記述してあるなら納得しますがね