都バス「ドル箱路線が軒並み大赤字」のナゼ コロナ禍で経営に天変地異 必要な施策は

取り巻く諸条件が影響する収支の悪化

 では、黒字を確保した路線にはどのような要因があったでしょうか。

 東京都区内の路線バス運賃は均一制をとっています。現在都営バスは大人210円(IC同額)、小児110円(IC105円)で乗車距離によらず同額です(一部路線除く)。したがって短距離の利用者が入れ替わりで多数利用してくれる路線が収支上よい結果を出すことになります。

 たとえば、黒字系統の中に「新小21」西葛西駅~新小岩駅があります(営業係数89)。それなりの距離・所要時間で高頻度運行のため、車両も乗務員もかなり投入していますが、東京メトロ東西線とJR総武線を南北につなぐ江戸川区のまさに基幹路線で、途中に都営新宿線船堀駅や江戸川区役所などの拠点があるため、各駅や区役所に集まる周辺住宅地の需要や駅間利用を拾い、こまめに乗降があって常に多くのお客さんが乗っている状況です。こうした路線が最も効率よく収益を上げていると言えるでしょう。

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とうきょうスカイツリー~豊洲~新橋を結ぶ長大路線の「業10」。2020年度の収支は129系統中125位。一気に赤字へ転落した路線のひとつ(中島洋平撮影)。

 一方、今回の系統別収支の背景には東京都ならでは、あるいは公営ならではの要因もありそうです。そのひとつに都内在住の70歳以上の高齢者を対象とした「シルバーパス」制度が挙げられます。東京都(福祉保健局)の支援の下で(一社)東京バス協会が実施しているもので、所持者はパスを提示するだけで都内のバス(都電など一部軌道を含む)を利用できます。日中を中心にシルバーパス利用者は相当な割合に上るはずです。

 シルバーパスの収入は一定の計算式のもとに各事業者に配分される形になるため、必ずしも利用者数と連動するわけではありません。実際に乗車している人数に見合った運賃分は得られていない可能性があります。推計あるいは配分による数字がベースなので正確とは言えないまでも、各系統の乗車料収入を乗車人員で割ると、だいたい1人あたり150円前後になります。これは東京都固有の要因と言えるでしょう。

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