都バス「ドル箱路線が軒並み大赤字」のナゼ コロナ禍で経営に天変地異 必要な施策は
コロナ禍で浮き彫りになったバス路線の収支の考え方 必要な施策は
2020年9月に京都市交通局が発表した2019年度の市バスの路線別収支でも、年度末にコロナ禍の影響が出たことから、黒字路線が一部赤字に転落し、84系統中約75%の63系統が赤字という結果でした。そして市交通局の分析として、管理の受委託(別の事業者に一部路線の運行にかかる業務を任せること)を行っていた民間事業者の一部撤退により、その分を交通局直営に戻したため、人件費が13%上昇したことを要因として挙げています。公営交通のコストの高さを浮き彫りにした結果とも言えますので、東京都の場合も公営交通なりのコスト要因もあるかもしれません。
コロナ禍を経てわかってきたことがあります。平常時なら多くの利用者があれば事業として成り立つバス路線も、コロナ禍のような事業者ではいかんともしがたい要因によって2~3割利用が減ると、事業として成り立たせるのが難しくなるということです。
それなりの利用があった路線は、地方の生活路線などとは異なり、国や地方自治体の補助なく、事業者が自主路線として維持してきましたが、このような状況になると、むしろ資源を投入している自主路線の方が赤字額も大きくなるため、維持が難しくなっています。
単純に公的資金を投入すればよいという話ではありませんが、コロナ禍を機に、地域の公共交通ネットワークの維持と最適化をきちんと行政・事業者・住民ともに議論し、必要なところには社会的投資の観点からの補助や利用促進などのソフト面を含めた支援の考え方が求められます。
【了】
Writer: 鈴木文彦(交通ジャーナリスト)
1956年山梨県生まれ。フリーの交通ジャーナリストとしてバス・鉄道に関する論文や記事を多数執筆。国土交通省や自治体、バス事業者のアドバイザーや委員も務める。著書に『日本のバス~100年のあゆみとこれから』など。
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