戦車砲でミサイル撃てたら最強、とならなかった米軍ガンランチャー 百発百中への試行錯誤
結局、使い勝手は従来砲に敗北
また、M60A2のほうは「未来の戦車」として鳴り物入りで登場したものの、調達単価、運用コスト共に高価格であり、導入後も、整備や管理の煩雑さに加えて、行進間射撃ができないという欠点が、よりクローズアップされました。一般的な対戦車車両とは異なり、この時期の主力戦車には、「シレイラ」導入時の想定以上に行進間射撃能力が求められることになったからです。
「シレイラ」は構造上、命中するまで誘導し続ける必要があるので、行進間射撃ができないというのは、導入が決定された際にもわかっていたことでした。しかしその後、主力戦車の行進間射撃能力が急速に向上。これができない戦車は、主力戦車としては致命的と考えられるようになりました。そしてこれらの理由から、「シレイラ」は主力戦車に向いていないという烙印を押されることになります。
このように、開発した本人のアメリカ軍もその運用を試行錯誤せざるを得ない位置づけの「シレイラ」でしたが、ほかにガンランチャー用の代替となる対戦車誘導ミサイルが存在しなかったため、M551「シェリダン」では結局、最後まで運用が続けられたというわけです。
しかし、「戦車砲から発射する対戦車誘導ミサイル」は、ロシアやイスラエルでさらに研究が進められました。その成果は、125mm滑腔砲で使用されるロシアのAT-11スナイパー(9M119レフレークス)や、105mmおよび120mmの両戦車砲で使用可能なイスラエルのLAHATなどに受け継がれています。
登場時期が早すぎて、シレイラでは未熟だった技術(性能)とそれにともなう問題点が、これら後発の「戦車砲から発射する対戦車誘導ミサイル」では、技術の進歩のおかげで解消されたのです。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
いや、そもそもミサイル撃つのに
何故戦車砲から撃たなきゃならないのか???
戦車砲のサイズに合わせなきゃならないデメリットしかないだろ!