マル秘装置「スピード・カプセル」で倍返しだ! 速度全振り迷機改良型「CV990」 効果あった?

「スピード・カプセル」どんな効果が?

 コンベア990に設置されたスピード・カプセル(アンチ・ショック・ボディ)は、主翼の断面形状を変化させることで、ジェット旅客機が巡航する速度「亜音速帯(マッハ1に満たない程度のスピード)」での空気抵抗を軽減することができる「エリアルール」を実現するもの。このことで、同パーツを設置していない旅客機と比べて、抵抗を減少して高速化を実現できる――というのが、設置理由です。

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JALのコンベア880(画像:JAL)。

 ただコンベア990は、試作型こそ1000km/hを達成したものの、顧客であるアメリカン航空の要求仕様であるスピードを達成することができず、スピード・カプセルも当初想定した効果を発揮しませんでした。そこでスピード・カプセルの設計変更や、胴体を70cmほど短縮するなどのさまざまな改修を実施。その結果、要求された巡航スピード(マッハ0.84)をなんとか達成することができ、「CV-990A」として1961(昭和36)年にアメリカン航空に採用されました。

 ただ、コンベア990は競合他機と比べて圧倒的な速度を出せるわけではありませんでした。ライバルの航空機メーカーがつぎつぎに新型機を発表していたこともあり、コンベア990は前身機のコンベア880と同様、商業的には失敗作として終わりました。アメリカン航空でさえも注文をキャンセル。1963(昭和38)年に同機は生産終了となりました。

 かつて羽田空港では、スイス航空のコンベア990が定期便で飛来しており、離陸時の真っ黒なエンジン排気と高周波のノイズが特長でした。現在同機は米カリフォルニアのモハーベ空港や、スイス交通博物館で見ることができます。経歴はともあれ、この「コンベア990」は、筆者(種山雅夫、元航空科学博物館展示部長 学芸員)個人的に、とってもかっこいいルックスをもつジェット旅客機だと思います。

【了】

【主翼すげえ!】「スピード・カプセル」が乗っかったCV990の全貌

Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)

成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。

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