ロシア使用の「燃料気化爆弾」は「TOS-1」か その兵器特性と見えてくる戦場の現状

ロシア軍がウクライナ軍との戦闘において、いわゆる燃料気化爆弾を使用したとの報道がありました。「燃料気化爆弾」にも様々な種類があり、地上兵器のTOS-1と見られます。その根拠と兵器特性、そこから見える現状などを解説します。

TOS-1Aの用途から見るウクライナの現状

 TOS-1Aは砲兵が扱う多連装ロケット砲に似ていますが、使い方が違います。多連装ロケット砲は、前線から距離をとった後方において射撃し、前線の味方歩兵や戦車を支援する間接射撃火器です。

Large 20220303 01
専用のTZM-T予備ロケット弾運搬車でTOS-1Aにロケット弾の装填準備中の様子。まだ弾頭に信管は取り付けられていない状態(画像:ロシア国防省)。

 TOS-1Aは、前線で味方歩兵や戦車に同行し、直接見える敵を攻撃する直接射撃火器で、第2次世界大戦期ドイツ軍の突撃砲のような使い方です。敵の反撃を受けやすい近距離で使われるため、防御力の高いT-72戦車の車体が使われているのはそのためです。

Large 20220303 02
TZM-T予備ロケット弾運搬車のクレーンを使ってロケット弾の装填作業中。フル装填24発を最短6秒で撃ち尽くすが、再装填には手間がかかる(画像:ロシア国防省)。

 その射程も500mから6000mと、多連装ロケット砲よりも短く、防御陣地の強行突破、市街戦での建造物の破壊や拠点制圧など使い方が限定されており、チェチェン紛争やイラクで実戦に使われています。

Large 20220303 03
TOS-1A専用のTZM-T予備ロケット弾運搬車で24発のロケット弾を運搬、装填支援する(画像:ロシア国防省)。

 TOS-1Aが本当に使われたとなれば、ロシア軍はかなり市街地に近接しているようですが、ウクライナ軍の頑強な抵抗を受けていることが想像できます。こうした特殊兵器まで持ち出さなければならないようなゲリラ戦や市街戦の困難さ、悲惨さは、ロシア軍自身が一番よく知っているはずです。

【了】

※一部修正しました(3月4日10時45分)。

TOS-1Aが目撃されたホメリ駅の位置

ロシア軍のウクライナ侵攻 最新情勢 戦争はどうなっているのか

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 「USB挿しっぱ」でクルマが“故障”する? 三菱公式の投稿にSNS騒然 「一体ナゼ?」「これマジで起きるよ」
  2. ロシア軍の戦闘機が「真正面から撃破される瞬間」を捉えた映像が公開 ドローンの突入を防げず
  3. 「海自最大の護衛艦」と「世界最大級の軍艦」が洋上で並んだ! 圧巻の編隊航行を上空から捉えたショットが公開
  4. 海自艦がロシア海軍の「超静かな潜水艦」を確認!浮上航行する姿を捉えた画像を防衛省が公開
  5. 都市に迫るロシア軍の「弾道ミサイル」が“空中で木っ端みじん”になる瞬間をウクライナ軍が公開 追尾から撃墜まで詳細に
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  3. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  4. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開
  5. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号