ロシア使用の「燃料気化爆弾」は「TOS-1」か その兵器特性と見えてくる戦場の現状

TOS-1Aの用途から見るウクライナの現状

 TOS-1Aは砲兵が扱う多連装ロケット砲に似ていますが、使い方が違います。多連装ロケット砲は、前線から距離をとった後方において射撃し、前線の味方歩兵や戦車を支援する間接射撃火器です。

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専用のTZM-T予備ロケット弾運搬車でTOS-1Aにロケット弾の装填準備中の様子。まだ弾頭に信管は取り付けられていない状態(画像:ロシア国防省)。

 TOS-1Aは、前線で味方歩兵や戦車に同行し、直接見える敵を攻撃する直接射撃火器で、第2次世界大戦期ドイツ軍の突撃砲のような使い方です。敵の反撃を受けやすい近距離で使われるため、防御力の高いT-72戦車の車体が使われているのはそのためです。

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TZM-T予備ロケット弾運搬車のクレーンを使ってロケット弾の装填作業中。フル装填24発を最短6秒で撃ち尽くすが、再装填には手間がかかる(画像:ロシア国防省)。

 その射程も500mから6000mと、多連装ロケット砲よりも短く、防御陣地の強行突破、市街戦での建造物の破壊や拠点制圧など使い方が限定されており、チェチェン紛争やイラクで実戦に使われています。

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TOS-1A専用のTZM-T予備ロケット弾運搬車で24発のロケット弾を運搬、装填支援する(画像:ロシア国防省)。

 TOS-1Aが本当に使われたとなれば、ロシア軍はかなり市街地に近接しているようですが、ウクライナ軍の頑強な抵抗を受けていることが想像できます。こうした特殊兵器まで持ち出さなければならないようなゲリラ戦や市街戦の困難さ、悲惨さは、ロシア軍自身が一番よく知っているはずです。

【了】
※一部修正しました(3月4日10時45分)。

TOS-1Aが目撃されたホメリ駅の位置

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Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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