今こそ大航海時代に回帰?「木造の貨物帆船」現代に建造中 荷主もつき「日本もぜひ」
今だからこそ生まれたエミッションフリー船
SAILCARGOが木造帆船の建造に取り組む背景には、海運が直面しているGHG(温室効果ガス)の排出削減という大きな課題があります。
貿易の90%を支えている国際海運は年間約8億トンものCO2を排出しており、世界全体で占める割合は約2.2%とドイツ1国分の排出量に匹敵します。IMO(国際海事機関)では2050年までにGHG総排出量を2008年比で50%以上削減することを掲げる、「GHG削減戦略」を2018年4月に採択しており、船会社や造船所は省エネ効率を高めた環境に優しい船舶や、水素やアンモニアといったカーボンフリー燃料エンジンの開発を進めています。
環境への対応は荷主にとっても同様です。流通行程全体で環境負荷を低減すべく、よりクリーンな輸送手段を選ぶ動きが活発化するなか、海運業界は環境対応の“競争”で荷主から選ばれる必要があるのです。そうしたなかでSAILCARGOは、風力と再生可能エネルギーのみで航行する貨物船で、クリーンな海上輸送の価値を証明する構えです。将来は、より大きな船型を開発し船隊の拡大を図っていきます。
1番船の「Ceiba」には補助エンジンの動力源としてバッテリーが搭載されますが、今後は水素燃料電池や藻類バイオ燃料の搭載も視野に入れています。さらに布のような柔軟性を持つ太陽電池であるソーラーファブリック製の帆を使うことも考えています。
ひょっとしたら日本にも?
SAILCARGOは日本に進出する機会を探っています。
同社のダニエル・ドゲット(Danielle Doggett)CEO(最高経営責任者)は取材に対し「日本は当社が協力するのに理想的な国です」との見解を示しました。
「日本は強力な島国であり、海が日常生活の主要な部分を占めています。私たちは、日本の豊かな海運の歴史を継承し、クリーンな海運で明るい未来を創造するために協力したいと思っています」(SAIRCARGO ダニエル・ドゲットCEO)
さらに「日本が提供する比類のない文化的にユニークな製品は、その製品にふさわしい方法で出荷する価値があります」と述べ、木造貨物スクーナー船のような「エミッションフリー海運を利用することで、価値ある製品が、CO2の排出なしに市場に届くプラットフォームを提供することができます」とアピールしています。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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