続々集まるNATO規格「155mm砲」でウクライナどう戦う? 対ロシア第二ラウンドへ
ウクライナの野砲&自走砲の使い方は?
もちろん、かつてのように砲撃座標に向けて無誘導の砲弾を雨のごとく撃ち込む方法もありますが、砲弾に共用性がある西側の155mm砲を使うメリットは、アメリカが開発したM982「エクスカリバー」やM712「カッパーヘッド」といった各種の誘導砲弾を、どの砲も発射できる点にあります。これらは精密誘導性能に優れているため、命中精度の高いピンポイント砲撃が可能です。たとえば、戦車などの戦闘車両だけを狙うとか、さらに高度な識別として、司令部車両のような特定の条件を備えた目標だけを攻撃することまでできるとされています。
加えて、偵察ドローン(無人航空機)や西側が提供する各種のリアルタイム偵察情報などでロシア側の位置情報が高い精度でウクライナ側にもたらされるため、より脅威度の高いロシア部隊に対して優先的に砲撃を加えることができるようになります。
たとえば、要衝に向かっていたり前線に急行中であったりといった、最先鋒を担っているもっとも脅威度の高いロシア軍BTG(大隊戦術群)を選び出して集中砲撃を加え、戦車などの戦闘車両を潰して弱らせたところで、ウクライナ軍の戦車部隊がさらに叩いて潰走させるといった戦い方です。
なお、これはあくまで著者が推察する榴弾砲を有効使用した戦い方のひとつの例に過ぎませんが、ウクライナにおけるいくつもの戦い方のパターンの中には、これと類似のケースも含まれているのではないかと考えます。
ただ、いずれにせよ、ドンバス地域の戦いでは、砲兵が活躍する場面が多くなることは間違いないでしょう。ゆえに、ここにきて急速に野砲や自走砲が西側諸国からウクライナに供与されるようになったといえます。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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