神出鬼没「空飛ぶ砲兵」爆誕? 米がウクライナに供与の「M777」榴弾砲の驚くべき使い道

軽さを活かし「中型ヘリでスリング輸送」も

 この軽さは、「中型の汎用ヘリコプターで手軽に空輸できる」という、競合の牽引砲にとっては不可能な“離れ業”を実現します。

 世界中に素早く戦力を展開する能力、すなわち「パワープロジェクション」(戦力投射)を重視するアメリカ軍だからこそ、M777の軽量さに惚れ込んでいる訳で、だからこそウクライナに大量供与したのでしょう。

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フィンランド軍のMi-8。基本的にMi-17と同じ(画像:フィンランド国防省)。

 従来であれば、アメリカ陸軍/海兵隊がM198を1門、ヘリコプターでスリング輸送(機外での吊下げ輸送)する場合は、CH-47F(積載量約10.9t)やCH-53E(同約13.6t)といった大型輸送ヘリコプターか、またはMV-22Bオスプレイ垂直離着陸輸送機(同約9.1t)が必須でした。ただし機体が非常に高価なため数は限られ、調達・ランニングコストも驚くほどかかります。

 これに対して重量がわずか4.2tのM777は、大量配備されている中型のUH-60M汎用ヘリコプター(同約5.2t)で1門をスリング輸送できるので、戦術的メリットが極めて大きいのです。

 しかし、ここで「M777が軽いのは分かるが、普通は”お古”のM198をウクライナに差し出すのが一般的では」といぶかる声も出るかもしれません。しかしアメリカにとっては中型ヘリコプターを使って「空飛ぶ砲兵」をウクライナの戦場で実行することに重きを置いているようで、となれば重量4t台のM777でなければだめなのです。

 というのも、ウクライナ軍が有する152mm牽引砲は主に3種あり、前述の2A65のほか2A36ギアツィント‐Bカノン砲(重量9.8t)、旧式のD-20(同5.7t)です。全て旧ソ連/ロシア製ですが、もちろん4t台の超軽量砲などありません。
(※カノン砲…榴弾砲よりも高初速で比較的直線的な弾道を描く火砲のこと)

 また中型ヘリコプターも、旧東欧圏で最もポピュラーな旧ソ連/ロシア製のミルMi-8ヒップを開戦直前に50機ほど保有していましたが、最大積載量4tのため、前述した既存の152mm砲はどれもスリング輸送ができません。ちなみに旧ソ連/ロシア製のミルMi-26ハーロー(同20t以上)という世界最大の“怪物”輸送ヘリコプターもかつて活躍していましたが、現在は老朽化のため退役しています。

 そこでアメリカが考えたのが、Mi-8の海外輸出型であるミルMi-17を11機、M777とほぼ抱き合わせで供与するというものです。同機はMi-8の発展型で積載重量も5tにアップ、M777をスリング輸送するには十分です。ウクライナ軍にいきなりアメリカ製UH-60を渡しても、使いこなすまでに相当な年月がかかってしまいますが、Mi-17なら仕様が基本的にMi-8と同じなので、すぐさま使え合理的というわけです。

【画像】有能すぎる「M777」と従来の自走砲を見る

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コメント

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3件のコメント

  1. ttps://twitter.com/MolotovAbe/status/1525598261171859456
    >ウクライナ版M777榴弾砲はデジタル火器管制装置が取り外されたモンキーモデル疑惑

    え、ちょ・・・は?
    まぁ鹵獲されて最新技術がロシアに渡ったら困る、し?
    いえ、これは・・・ロシアのプロパガンダですね!たぶん絶対にそう!
    ウクライナが勝ってるハズなのにアメリカが停戦呼びかけたのは武士の情け!
    皆さん!最後の踏ん張りどころです!
    ウクライナ大使館に募金はしましたか!?諭吉でお願いしますよ!?
    JAPaneseは金持ってるでしょ!?諭吉♪あ、それ諭吉♪1枚じゃ怒りますよ!?
    ウクライナに栄光あれ!

  2. 戦争の好きな米国は、喧嘩の売り方が巧妙です。日本もABCD包囲網に取り込まれ自衛戦争を強いられたことを忘れてはなら無い。
    自国の利益に合わない相手に対しては悪魔とでも手を組む事にチュチョシしない恐ろしい国です。
    人権や自由を唱えながらジハッドをするのは許される?
    両軍ともミサイル攻撃に対する防御力は弱いようです。イスラエルのアイアンドームのような防御力が日本には必要です。
    自力またはイスラエルの防空システムを導入してほしい!
    自国は米軍とは独立した国防軍が必要です!
    米国の都合次第で日本は棄てられるのは、米国の過去の戦争をみれば一目瞭然です!

  3. 榴弾砲はロシア軍がやっているように数を揃えて撃ちまくってナンボ。

    撃つごとにヘリで吊り上げて移動するなんぞという、まどろっこしい運用法では、いかに命中精度が高かろうとも焼け石に水。
    そもそも航空優勢が取れていないところでヘリを飛ばしたら、それこそ絶好の標的。

    米軍という絶対無敵の軍隊が運用して初めて威力を発揮するような高価な代物をウクライナ軍は欲していない。
    それよりもゼレンスキーの言うように「弾だ、弾だ、弾だ。」