海自US-2よりビッグ! 世界最大級の消火・救難飛行艇AG600「クンロン」初飛行 中国
日本のUS-2よりもビッグです。
従来機と同名ながら機体構造を一新した新型機
中国国営の航空宇宙・防衛企業である中国航空工業集団(AVIC:Aviation Industry Corporation of China)は2022年5月31日、独自開発の消火・救難飛行艇AG600「クンロン」が初飛行に成功したと発表しました。
AG600「クンロン」は、さまざまな用途に使用可能な水陸両用機として開発された機体で、胴体下部は海や湖などへの離着水が可能な艇体構造をしているものの、陸上の飛行場でも運用できる本格的な降着装置も装備しています。
原型は2017年12月24日に陸上からの初飛行に成功しており、2020年7月26日には洋上における離水にも成功していますが、今回、初飛行したのは新構造を採用した消火・救難型で、原型のAG600が全長37.0m、最大離陸重量53.5tなのに対して、新型は全長38.8m、最大離陸重量60tへと拡大しています。
フライトは、広東省にある珠海金湾空港を10時55分に離陸したのち、約20分間飛行し、11時15分に問題なく着陸したとのこと。説明によると、新型のアビオニクスや統合された飛行制御装置などにより、従来の試作機よりも優れた飛行安全性やプラットフォーム開発能力などを有していることから、これによりAG600プロジェクトは新たな開発段階に移行するそうです。
なお、最大積載能力は約12tあり、これで国産(中国製)の消火用大型飛行機のギャップを埋めるのに貢献するだけでなく、空中消火モデルの開発における大きなブレークスルーにもなると説明しています。
【了】
日本がUS-2を売り込みたかった所のシェアは全部持ってかれちまうのだろうな。
AG600の設計にあたっては民間の耐空性基準を採用し、民間機としての型式証明を得ることを前提にしています。
具体的には、アメリカの14CFR Part25に該当する中国航空局CCAR-25が設計基準となっているのです。
この基準は、日本だと耐空性審査要領の第三部にあたりますが、内容が国ごとに違っているというのではなく、ほぼアメリカの14CFR 25をコピーしたものです。
一方、US-2のような「パワード・リフトSTOL機」では、その耐空基準を満足することは絶対にできません。
主翼が前進することで発生する揚力だけではなく、エンジン後流の吹き降ろしも使って機体を支える「パワード・リフト機」は、通常の飛行機とは全く違った特性を持っているからです。
US-1やUS-2の設計は、この「全く違った部分」の安全性を独自技術で確保していますが、それは国際的な基準の評価を経たものではなく、あくまで「メーカーと防衛省が審査して許容した」ものにすぎません。
従って、どう頑張ってもUS-2は自衛隊や海外軍隊以外で使用することはできませんが、AG600であれば普通の飛行艇として運用や輸出が可能なのです。