存廃問われる「福塩線」なぜ凋落? “南線”と“北線”で本数ケタ違い 変わってしまった地域の動線

高速バスなら1/4の時間で広島市内に!

 福塩北線の中で、かつて自治体の中心駅であったのは備後三川、上下、甲奴(こうぬ)、吉舎(きさ)、三良坂の各駅です。しかし各自治体は2004(平成16)年までに世羅町、府中市、三次市へ編入され、各地域の過疎化もあって拠点としての賑わいはあまり見られません。

 そうしたなか、地域に根強く存在するのが、沿線から“広島市内”と“世羅町内”への移動需要です。

 前者を担うのは、1996(平成8)年の運行を開始した高速バス「ピースライナー」(中国バス・広島交通)です。甲奴・上下・備後矢野・備後三川など福塩北線の主要駅近くを経由し、県東部の最終乗車地である高坂バスストップ(三原市)から広島市内を約1時間で結びます。高坂バスストップでは広島空港方面に乗り換えも可能です。

 かたや福塩北線で広島へ向かおうとすると、福山側、三次側のどちらへ出るにしても徐行区間が多く時間がかかり、高速バスと比べてルートも相当な遠回りになるため、大体の場所で広島まで2~3時間はかかってしまいます。

 なお府中~福山間でも線路は東側に回り込むため、広島市内への移動は若干不利。福塩北線は高速バス「ピースライナー」に、福塩南線はピースライナーと同時期に運行を開始した「リードライナー」(府中市内~広島市内)に、広島市内への移動需要をピンポイントで奪われているのです。

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高速バス「ピースライナー」。矢野温泉口バス停(備後矢野駅近く)にて(宮武和多哉撮影)。

通学利用も「高速バス」

 福塩北線のなかでも、府中市から20kmほど北の世羅町への通勤・通学は200人以上(平成27年度国勢調査より)。福塩北線内から世羅町の通学需要も、その中で一定数存在しますが、これも、「ピースライナー」が一部担っています。

 この高速バスは甲奴・上下などから世羅町内までは乗車・下車とも可能で、朝7時30分に甲奴駅前を発車する便で世羅高校に通う生徒も多いのだとか。かたや、鉄道沿線にある上下高校は、地元である上下中学校からの進学が10人を割る年があるほか、他地域からの進学も伸び悩んでいるため定員割れが続き、福塩線の通学利用の減少にもつながっています。

【存廃危機は“北線”】福塩線の地図ほか 画像で見る

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コメント

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3件のコメント

  1. どれだけ利用者が少なくなっても、公共交通はなくなってはならない。
    少しでも人件費削減、人手不足解消のためにはやはり無人運転のバスが必要不可欠となると思う。
    一日も早く事故の心配のない無人バスの実現を願ってならない。

  2. 「3両編成の電車が1時間に2本走ります」とありますが、通常は2両編成がほとんどで一部4両編成(2+2両)があります。3両編成は朝夕のラッシュ時の一部のみです。ジェイアールアールの普通列車編成表にも記載がありますのでご確認のほどどうぞよろしくお願いいたします。

    • ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。