吊り上げたのは軍縮の棚ボタ? クレーン船「蜻州丸」 旧陸軍と海軍が手を取り作ったワケ

作業船の一種に、重量物を持ち上げるクレーンを装備する「起重機船」があります。旧日本陸軍は、かつて「蜻州丸(せいしゅうまる)」という起重機船を持っていたのですが、なぜ陸軍がそんなフネを必要としたのでしょうか。

「八八艦隊」プロジェクト頓挫ののちに

「要塞整理案」と「要塞再整理案」の目的は、明治初期以来、五月雨式に外国から購入した雑多な要塞砲を整理し、第1次世界大戦の戦訓から、より強力で射程の長い要塞砲を備えた砲台を建設することにありました。なお、その骨子には「艦砲の威力増大に対し備砲の威力を強化する、防御線を外海に推進する」と記されていました。

「要塞再整理案」は、翌年に予算2億6000万円で議会を通過、これにより、戦艦の主砲に匹敵する36cm砲と41cm榴弾砲の試作が始まります。ただ、このように新たな砲台の整備が進められることが決まったことで、起重機船についても新型を調達することが要望されたのだと推察されます。

Large 20220723 01
「蜻州丸」が部品を運搬した巡洋戦艦「赤城」の一番主砲搭の45口径40㎝連装砲塔。壱岐要塞黒崎砲台で写されたもの(画像:壱岐要塞司令部)

 ところが、その「要塞再整理案」が可決された1919(大正8)年、旧日本海軍では戦艦8隻、巡洋戦艦8隻を中心に多数の補助艦艇を建造するという、いわゆる「八八艦隊案」が成立します。この「八八艦隊」は完成した時点での維持費が年間6億円にのぼると見積もられました。ちなみにこの頃の日本の経常歳出額は15億円前後です。

 加えて、陸軍は平時、27万人から30万人の兵士を有していました。第1次世界大戦戦後の不況とシベリア出兵のさなか、新たな要塞建設や新型火砲(要塞建設とは別予算)の開発など、現実的には無茶な話でした。

 そうした状況下、1921(大正10)年に日本はアメリカやイギリス、フランス、イタリアらと軍艦の保有制限を課したワシントン海軍軍縮条約を締結。これにより海軍が策定した「八八艦隊案」は廃止されます。

 ただ、このとき同時に日本が提案した「太平洋防備条約」が締結されたことで、アメリカはハワイ以西、フィリピン以南に要塞化された艦隊根拠地を持つことが不可能になったため、日本は外交的には勝利を収めたといえるでしょう。

【わかりやすい】地味ながら高機能の「蜻州丸」使い方をイラストで解説

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  3. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号
  4. 飛行中の「日の丸特別機」に粋なサプライズ! 天皇皇后両陛下を“最新ステルス戦闘機”がお出迎え
  5. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 「“再有料化”でいいから4車線化して」→普通車280円になって1年 利用者負担で勝ち取った“効果”あきらかに 八木山バイパス