吊り上げたのは軍縮の棚ボタ? クレーン船「蜻州丸」 旧陸軍と海軍が手を取り作ったワケ

作業船の一種に、重量物を持ち上げるクレーンを装備する「起重機船」があります。旧日本陸軍は、かつて「蜻州丸(せいしゅうまる)」という起重機船を持っていたのですが、なぜ陸軍がそんなフネを必要としたのでしょうか。

仕事は戦艦の砲塔を陸に運ぶこと

 ただ、これら条約締結により「八八艦隊」のために廃棄される旧式艦や、建造中止となった艦の砲が余ることになりました。この余剰砲をそのまま要塞に備えれば良いわけです。そこで、陸海軍の垣根を越えて、砲の転用を強力に推し進めていったのが、陸軍重砲開発のチーフともいえる技術本部重砲班長の松村乙吉砲兵大佐でした。こうしてワシントン軍縮条約の翌年から、陸海共同の巨大プロジェクトが始まります。

 かくして、新たな起重機船として計画された「蜻州丸」は、この巨大プロジェクトの一環として、陸軍の委託で海軍の艦政本部が設計を担当することになりました。

 ちなみに、「蜻州丸」は陸上に砲塔型の砲台を設置するという巨大な工事システムの一部をなすサブ・システムでした。砲塔型の砲台を据え付けるための機材としては120t門型クレーン、100tウインチを装備するほか、古来より重量物の運搬に使用されたシュラ(重量物運搬用のソリ)や神楽桟(ろくろ)も備えていました。

Large 20220723 01
1926年4月6日、公試中の「蜻州丸」。巨大な主クレーンが目立つ。煙突の白い波線が陸軍船であることを示している。

「蜻州丸」は1926(大正15)年に東京の石川島造船所で竣工します。排水量は2000トンあったものの、垂線間長(船首喫水線先端と舵軸中心までの長さ)は61m。船型はたとえるなら盥(たらい)のような形をしており、このため速度は遅いものの安定が良く、また3枚舵なので小回りも効きました。これは建設作業に従事する船としては必須の能力でしょう。さらに航続距離は7ノット(約13km/h)で1500海里(約2780km)ありました。

 この船を特徴づけるのは、むろんクレーンの荷重で、メイン・クレーンは150tの吊り上げ能力がありました。戦艦「長門」型の40cm砲の砲身重量が1門約100tなので、充分な数値です。

【わかりやすい】地味ながら高機能の「蜻州丸」使い方をイラストで解説

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  3. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号
  4. 飛行中の「日の丸特別機」に粋なサプライズ! 天皇皇后両陛下を“最新ステルス戦闘機”がお出迎え
  5. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 「“再有料化”でいいから4車線化して」→普通車280円になって1年 利用者負担で勝ち取った“効果”あきらかに 八木山バイパス