えぇぇ農業用!? アメリカ特殊作戦軍の軍用らしからぬ新型 なぜ選ばれた?
もりもり武装!
その後アメリカ空軍はLAARのような航空機を自軍で運用するのではなく、非正規戦に直面している同盟・友好国に供与して運用させる方針に転換したため、LAAR計画はキャンセルされてしまいます。
それでも、IOMAXとエアトラクターは外国での需要を見込んで、AT-802Uの開発を継続しました。その結果、UAE(アラブ首長国連邦空軍)からAT-802Uの採用を勝ち取りましたが、IOMAXが他社の農業用機をベースとする軽攻撃機「アークエンジェル」の開発に乗り出したため、AT-802Uはいったん宙に浮いてしまいます。
しかし捨てる神あれば拾う神という言葉もあるように、IOMAXと同様の事業も行っているL3ハリスがAT-802Uプロジェクトに参画して開発を継続。紆余曲折を経てアームド・オーバーウオッチの座を射止めたたというわけです。
AT-802Uの外観は主翼下への兵装を搭載するハードポイントの追加と、情報収集用器材の追加装備以外は、原型機のAT-802と大差ありませんが、コックピットはカラー液晶ディスプレイと、モノクロのテレビカメラディスプレイを備えたグラスコックピットに変更されています。
使用可能な兵装は500ポンド、1000ポンドの無誘導爆弾、GAU-19 12.7mm機関砲ポッド、AGM-114ヘルファイア対戦車ミサイル、ロケット弾ポッド、レーザー誘導爆弾などで、コックピットと使用できる兵装の豊富さは、ジェット軽攻撃機にも引けを取りません。
AT-802Uのような航空機は、国家対国家の正規戦ではあまり使いどころがありませんが、テロリストや武装集団、麻薬密売組織などとの戦いでは有用な存在でしょう。
この種の任務に使用される軽攻撃機は、前に述べたAT-6Eのような練習機ベースの採用例が多かったのですが、今回のアメリカ特殊作戦軍の採用により、AT-802Uのような農業機ベースの軽攻撃機の採用が増えていくのかもしれません。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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