ダグラスDC-10なぜ“尾翼にエンジン串刺し”に? 初期の「ジャンボ」っぽい設計から一転…その経緯

3発機&DC-10ならではの強みとは?

 このDC-10、当初はアメリカの国内線を前提とした運用が想定されていましたが、3発エンジンの採用が功を奏し、デビュー後は洋上を飛ぶ国際線でも運用されることになります。

 当時、まだ旅客機のエンジンの信頼性はまだ高くない、とされていました。そのためエンジン故障に備え、双発機が大陸間を飛行する場合には、洋上での飛行範囲に制限がありました。このルールは、三発機には適用されないため、洋上飛行路線に関しては有利となります。また、当時、長距離路線用の旅客機として多数派だった4発機とくらべても、エンジンが少ない分、燃費の向上などの効果も期待できました。

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JALのボーイング747-100型機。当時の国際線主力機でもあり、エンジンを4発搭載していた(画像:JAL)。

 なお、DC-10によく似た設計の3発機として、ライバル機、ロッキードL1011「トライスター」があります。ただ、DC-10はシリーズ化するにつれ、エンジンの選択肢を広げていました。というのも、尾翼エンジンの取り込み口の位置は2機種ともに同じものの、「トライスター」は、吹き出し口が胴体最後部にある「S字型」のもの。対しDC-10の尾翼エンジンは通常のものと同じストレート型であったため、エンジン選定の制限が少なかったのです。

 たとえばJALでは、整備効率向上のため、同社で採用されているボーイング747と同じプラット・アンド・ホイットニーJT-9Dエンジンを搭載した「DC-10-40」を20機導入。国内幹線で747を補完するだけでなく、中距離国際線にも使用されました。同シリーズは軍用型も併せて446機が製造され、JALから2005年に全機が引退した後も、成田空港などでは各国の飛来機が見られました。

 なお、DC-10と同型機の設計をベースに、デジタル化を図った「MD-11」という派生型も、その後開発され、この機はJALでも導入されています。DC-10の姿は今やほとんど見られなくなりましたが、MD-11については、今でも貨物機が成田空港に飛来することがあります。

【了】

【写真】違いわかる?“ほぼ見た目同じ”の兄弟機「MD-11」

Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)

成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。

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コメント

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1件のコメント

  1. 機体固有の問題?で堕ちまくったシリーズですよね