ジェットフォイルの代わりにも? 全く新しい「水中翼船」日本へ 高速艇の選択肢に
神戸は導入に最適? いろいろ揃った条件
神戸空港島には液化水素荷役実証ターミナル「Hy touch 神戸」が置かれており、豪ビクトリア州ラトローブバレー産の褐炭から製造した水素を液化し、日本まで専用船で輸送する国際水素サプライチェーン構築実証試験の場として活用されています。
さらに神戸市は「水素スマートシティ神戸構想」を掲げ、FCV(燃料電池自動車)の導入や水素ステーションの設置といったインフラ整備や、神戸ポートアイランドに設置した水素ガスタービン発電設備「水素コジェネレーションシステム」からのエネルギー供給の実証実験に協力するなど、水素燃料船を就航させる下地が整っているのです。
同市に拠点を置く川崎重工業は、世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」(タンク容量1250立方メートル)やジェットフォイルを建造した実績があるため、アルマテックは同社の技術力に期待を寄せています。
川重が製造するジェットフォイルの代わりになるの?
日本で就航している水中翼船としては、川崎重工が米ボーイングから製造・販売権を得て建造している川崎ジェットフォイルが代表的な存在です。2020年6月には、25年ぶりとなる新造船「セブンアイランド結」が東海汽船に引き渡されました。
ただ、ジェットフォイル用のガスタービンエンジンが製造を終えていたため、この時は中古のエンジンを流用しています。それでも船価は50億円超と非常に高額なものになり、東海汽船以外は新造船の発注を見送っています。
ZESSTは航走可能な波高が1.5m程度で、航続距離も100kmというスペックからすると、東海汽船が東京~伊豆諸島航路で運航するジェットフォイルを代替するのは難しいでしょう。とはいえ、水中翼船に新しい選択肢が増えるのは、海事産業へプラスの方向になりそうです。
なお、大阪・関西万博をターゲットにした水素燃料船を巡っては、ヤンマーが小型船向け舶用水素燃料電池システムの市場投入に向け開発を進めているほか、岩谷産業と名村造船所なども、夢洲ならびに大阪市内で水素燃料電池船を導入する構想を発表しています。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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