巨大クレーンに圧巻! 清水建設の世界最大級「作業船」ついに登場 海の5兆円市場に切り込む
洋上風力発電所の“作り方” SEP船は強い味方!
SEP船による洋上風車の建設手順は、はじめに風車の基礎を施工。続いて、風車のタワー、ナセル(駆動部)、ブレード(羽)をSEP船に搭載・運搬し、基礎上に据え付けます。
「BLUE WIND」は、8MW(メガワット)風車なら7基、12MW風車なら3基分の部材すべてを一度に搭載でき、予備日をみても8MW風車の場合は7基を10日、12MWの場合は3基を5日で据え付け可能です。気象や海象条件が非常に厳しい日本周辺海域での使用を想定した性能を持っており、太平洋側の特徴である10秒程度の長周期波浪(うねり)においても船体のジャッキアップ・ダウンができ、既存のSEP船に比べて高い稼働率を発揮することが期待されています。
同船は10月下旬から瀬戸内海でジャッキアップ・ダウンやクレーン操作といった習熟訓練を約4か月行った後、2023年3月から実際に洋上風発施設の建設現場へ投入。ウェンティ・ジャパンが計画している富山県入善町沖で、3MW風車3基の施工を実施します。
その後、北海道の石狩湾へと移動し、グリーンパワーインベストメントが開発を進める日本初の8MW大型風車を採用した国内最大級の商用洋上風発「石狩湾新港洋上風力発電施設」を施工する予定。6月中に室蘭港で艤装を整え、7月から始まる建設工事に備えます。
洋上風発は「今後、拡大が期待されているエネルギー源」(資源エネルギー庁)として期待されています。同庁は、2030年に温室効果ガス46%削減(2013年度比)とする目標を達成するためには、風力発電の導入を拡大し、陸上風力で17.9GW、洋上風力で5.7GWという水準を目指す必要があるとしています。
清水建設は、風車本体の調達から設置工事までを含む洋上風発施設建設工事の市場規模を5兆円超と試算。日本政府による2050年カーボンニュートラル宣言などで、再生可能エネルギー市場に注目が集まる中、自航式SEP船を活用し洋上風発の需要を取り込んでいく考えです。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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