見えた! M1A2「エイブラムス」最新改良型 半世紀現役戦車へ 「X」の傍らで開発進む
中身を別物にしてM1「エイブラムス」は半世紀現役へ
M1「エイブラムス」戦車の改修は、システム拡張パッケージ(SEP)のバージョンアップという形式で、主にソフトウェアが中心になります。主砲や機関系に大きな変化は無く、外見上あまり変わらないように見えますが、中身は全く別物になり戦闘力は各段に向上しています。
SEPv4は2017年にレイセオン社が試作改修案の契約を結んでおり、2025予算年度の配備、2026予算年度の戦力化を予定しています。プロトタイプのテスト開始時期は不明ですが、2022予算年度は9月30日で終了しているにもかかわらず、Facebookの投稿をみるにテストはまだ行われているようですので、その納入は遅延していることがうかがえます。
GDLSが発表した「エイブラムスX」は、このSEPv4の特徴をおさえ、さらに軽量化、乗員数の削減、燃費を向上させるハイブリッド駆動システムを搭載しています。今後の世界の戦車市場環境の変化を見据え、単にシステム拡張パッケージのバージョンアップに留まらず、ハードウェアも根本的に改修することでヨーロッパメーカーとも対抗しようという意思のあらわれと見られます。
アメリカ陸軍は2021年時点でM1A2を1995両、運用しています。現在のSEPv3改修は2017予算年度から執行され、2019予算年度に最初の24両が納品されています。予算要求は毎年継続されており、2022予算年度には累計483両のSEPv3が完成します。さらに承認された予算で2024予算年度までに累計674両が完成することになっています。それでもまだ1300両以上がSEPv2のまま残っていますので、SEPv4の開発が予定通り進めば、2023予算年度か2024予算年度よりSEPv4への改修も同時に進められていくようです。
ただし、上記のようにSEPv4の計画はやや遅延気味で、予算の制約もありますので、M1A2全数がSEPv3とSEPv4になるかはわかりません。制式採用の1981(昭和56)年から2050年まで半世紀以上使い倒されるM1「エイブラムス」。いったいバージョンはいくつ積み重ねることになるのでしょう。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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