鈍足・無防備・甲板短い…“商船改造空母”は戦時中何していたのか 実は縁の下の力持ちな功績

足が遅くてもOKな用途とは?

 優秀船舶を空母に改造するにあたっては、一定の性能レベルが設けられていますが、その目安とされたのが「航空機種及性能標準」です。ただ、その基準は1935(昭和11)年の時点で「空母側が19.44ノット(約36km/h)を発揮できれば達成できる」というレベルでした。だからこそ、春日丸型を大鷹型空母に改装するにあたっても、最大速力21ノット(約38.9km/h)で問題なかったといえるでしょう。

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旧日本海軍の空母「沖鷹」(画像:アメリカ海軍)。

 この「航空機種及性能標準」、1937(昭和13)年には改正され、空母側の速力は23.33ノット(約43.2km/h)が求められるようになります。こうしたことから、飛鷹型航空母艦は最高速度25.5ノット(約47.2km/h)となり、結果、太平洋戦争でほかの正規空母に比肩するほど活動することができたのです。

 もし、艦政本部が早い段階で「将来、航空機を発艦させるための合成風速はより必要となり、空母側が高速でなければならない」と認識するようになっていたら、空母改装を前提に建造された商船も、より快速性を要求するか(商船としては、過剰な高速性能は経済的に見合わないため、海軍が要求する必要があります)、空母改装の際に機関換装が可能な設計にしたと考えられます。

 では、結局主要な海戦に参加できずに終わった、飛鷹型以外の日本の小型空母は太平洋戦争中、何をしていたのでしょうか。結論からいうと、日本本土から戦地へ航空機を輸送する任務についていたのです。当時の技術力で航空機を空輸した場合、脱落機や行方不明機が発生することが多々あります。輸送船でも航空機は運べますが、分解する必要があるので、非常に手間がかかります。

 大鷹型などの小型空母は完成機をそのまま輸送できるため、基地航空兵力を主力と考えていた旧日本軍には欠かせない存在でした。これら小型空母は、艦載機ではない、双発機などの陸上機を運んだほか、場合によって陸軍機、重要物資、果てはトラックや戦車まで搭載して、重要な補給任務に従事していたのです。

 フラットな上甲板を持つ輸送船、いうなれば2022年現在、海上自衛隊が運用するおおすみ型輸送艦に近しい存在ともいえるでしょう。

 飛鷹型空母以外の日本の商船改造空母は、海戦で重用されることはありませんでしたが、縁の下の力持ちとして輸送任務に従事し続けた、隠れた「武勲艦」と言えるのではないでしょうか。

【了】

【写真】ほかの客船転用空母とはちょっと違う ドイツ客船がベースの「神鷹」ほか

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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コメント

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7件のコメント

  1. 最近この間違いをする人がすごく多いけど「近しい」は人間関係の親密さを表す言葉で近似の意味はないはずですよ

  2. 記事の内容、丸写しって本当ですか?

  3. 大活躍した米軍の護衛空母は何れも20ノットに満たないものでしたよ。カタパルトにも是非言及すべきですね。

  4. 米軍の護衛空母は「有力な日本軍機動部隊がいる間は投入しても損害を増やすだけ」とされ
    上陸戦支援に便利と判断されるまで対潜用扱いされてたので
    仮にカタパルト付きで日本が持ってても戦況が有利に進展して追撃戦にならない限り
    史実通りの航空機輸送以外にはさほど使い道は無かった気がしますね。
    これら日本の改造空母に対する米軍の評価はおおむね
    「航空機輸送に活躍し重要な役割を果たしていたにもかかわらず、
    途中で非効率で能力的にも無理のある船団護衛に振り向けられ無為に消耗した。」
    というものになっています。
    日本の勢力圏は水上機運用できる島がいっぱいあるし航空機に哨戒させるなら
    空母を張り付けず基地航空隊を出せばいいだろう
    発着は方法に関係なく追い風、横風での実施が飛行機側にとって危険だし、
    そのたび空母が進路を変えるとか一緒にいる船団の運行の邪魔でしかない
    ということが評価の根拠のようで、かといって機動部隊に組み込める速力もないとなれば
    飛行機輸送が唯一にして正解の用途だと思います。
    上陸支援にしてもウェーク島攻略時に一隻あればと思わなくもないですが
    その他は大体順調に進みましたしね

    • その理屈だと米軍は船団護衛に護衛空母を使って無かったことになりますが。
      戦局逆転後、逆上陸や増兵の船団が制空権がないためことごとく失敗したはずですが。

    • >その理屈だと米軍は船団護衛に護衛空母を使って無かったことになりますが。
      いいえ、なりませんよ。米軍の置かれた状況は異なるので
      違う選択肢をとるしかなかったというだけです。
      どんな状況下にも通用する最適な方法など存在しません。
      米軍は、日本軍の状況なら基地航空隊をもっと活用すべきだったと言ってるだけです。

      >戦局逆転後、逆上陸や増兵の船団が制空権がないためことごとく失敗したはずですが。
      意味不明です。「上陸戦にあれば便利」と、「なかったら必ず失敗」はイコールではありません。

      米軍の護衛空母は一度は艦隊型空母としての運用が図られた
      (1943年始め)ものの作戦能力が低く艦隊の足を引っ張ると失望され
      一旦航空団の配備が取りやめられています。
      艦隊型空母の不足により日本艦隊が出てこないだろう方面の
      上陸支援に渋々出したが、そこで便利だったので
      (旧式戦艦もいるのでCVEだけが足手まといになる状況でない
      艦隊型空母と違って失っても痛くない
      艦隊型空母をそういった任務に張り付けておきたくない)
      復権を果たした。という存在なのです。
      CVEのEはExpendableのEという乗員の自嘲は末端の悲哀ですね。

    • ふ~む、しかし船団護衛には向かないっていうのは納得がいかないなぁ。対潜護衛だって出来るわけだし、別組織の基地航空隊と連携してリレーで護衛してもらうよりよほど理に適ってると思うけどなぁ