自賠責の値上げ前に国交省「交通事故被害者ノート」作成 国民負担“賦課金”の使い道に?
被害者支援制度を、事故に直面する人に届ける
打ち出された被害者救済対策の充実提言は新たな賦課金の議論につながり、約8000万台の自賠責保険料の実質値上げにつながりました。事故被害者の救済と自動車事故被害者対策費の確保議論が結びつけられたことについての困惑は、被害者の中にもあります。
交通事故被害者救済ノートには行政のさまざまな被害者支援制度が紹介され、家族の困りごとを記入する中で、どの制度が利用できるかが見えてくるようになっています。被害者が直面する課題について時系列と重要度に応じて章立てが整理され、
・被害者と家族について
・自賠責保険制度について
・警察、検察、裁判について
・支援者や窓口の連絡先
・利用できる制度の窓口について
と、続きます。
多くの被害者は混乱の中で支援制度を把握できないままでいます。ノートを開くことで、事故直後から始まる“闘い”の全体像を知ることができます。
作成に携わった保障制度参事官室の担当者は、「事故の当事者と支援団体がいっしょに書き込んでいくこともできるように作成している」と話します。
交通事故被害者ノートの作成を働き掛けた支援団体「途切れない支援を被害者と考える会」は、犯罪被害者の体験をもとに被害者ノートを作成。被害者の回復を手助けしていました。今回の「交通事故被害者ノート」は、その被害を交通事故に限定して、より詳しく対策を説明した内容です。被害の程度によって必要性は変わってきますが、困った時のために存在を知っておくことで役に立つかもしれません。
12月6日からは国土交通省の自賠責ポータルサイトや自動車事故対策機構(NASVA)のサイトからダウンロードが可能です。12月19日頃からは、都道府県の犯罪被害者向けの総合窓口でも配布を予定しています。
自動車ユーザーの負担は、被害者救済対策のさらなる充実につながるのか。交通事故被害者ノートの活用は、その試金石になります。
【了】
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
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