日本はなぜ「激レアなジャンボ機」が誕生? 多数派となにが違った? 背景ある特殊事情
次世代機でも「特殊なジャンボ」誕生
次世代ジャンボである747-400は、運航システムの大幅なコンピューター化が進められました。それまで航空機関士を含む乗務員3人から、機長と副操縦士の2人乗務できるようになり、コクピットの計器が大幅にディスプレイ化されました。
ただ747-400も、そもそもが長距離国際線むけの旅客機。というわけで、ここでも、日本仕様の747が出現することになります。それが「747-400D」です。末尾の「D」は「Domestic(国内)」を示しているとされています。
747-400Dでは、747SR同様に、スタンダードタイプの747-400から、着陸装置の強度の向上などの改修が施されました。ただ747-400Dは、-400と外形上を比較しても大きな相違が存在します。
そのひとつが、747-400の特徴でもある立ち上がった主翼端「ウィングレット」。空気抵抗を削減し、結果燃費効率を改善させるという工夫のひとつですが、-400Dでは撤廃されています。ボーイング社によると、これは巡航中の効率が下がる一方で、翼の負荷を下げることにも繋がり、設計上の離着陸回数を増やすことができるとしています。つまり、短距離・多頻度運航のため、あえてこの機構を廃したということでしょう。
747-400DはJAL・ANAともに国内線に就航。ANAの747-400Dは客席数をJAL機より一人多い569席と設定しました。また、ANAでは、国際線用機材の-400のうち計4機が、ウイングレットを取り外し-400Dに改修するなどの変貌を遂げました。このレア・タイプは、2階席の窓の数に特徴があったとされています。
なおこのほかにもJALでは、2階席を延長した747-300に、747-100のエンジンを取り付けた747-100B/SUDや、国内線仕様の747-300SRなど、レアな747の派生型を使用していました。
このように一風変わった747が多く存在していた事も、かつて日本が「ジャンボ機王国」とされたひとつの証といえるでしょう。
なお、日本ではJAL・ANAともに747を全機退役させており、2023年現在では、NCA(日本貨物航空)が747貨物機を使用しており、日本の「ジャンボ機」が全て引退したわけではありません。乗客として乗ることはできませんが、これからしばらくは「日本のジャンボ機」を見ることができそうです。
【了】
Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)
成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。
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