「大阪ひだ」はなぜ残った? 新型HC85系でロングラン存続 「直通は便利」が再発見される

「大阪ひだ」息を吹き返したワケ

 しかし、2015年頃から、「大阪ひだ」の利用が増えてきました。インバウンド効果が出てきたのです。

 海外から日本にくる個人旅行者は全国のJRが乗り放題の「ジャパン・レール・パス」をよく使用するのですが、人気観光地である京都と高山を結ぶ1日1往復の直通特急が、移動手段として重宝されるようになったのです。

 高山市は2012年に海外旅行者の開拓のための専門部署を設けたこともあり、4年後に宿泊客数は3倍に拡大。地方都市随一のインバウンド観光地へと変貌しました。高山駅から濃飛バスで50分の白川郷も合掌造り集落に魅せられた海外の方がたくさん集まります。その影響で「ひだ」の乗客の2~3割は外国人が占めるようになったそうです。駅みどりの窓口や隣のバスターミナルにも長蛇の列ができるようになりました。

 コロナ禍前は「大阪ひだ」でも、外国人観光客が20人、30人と乗っている姿を見かけるようになりました。京都~高山~白川郷~金沢、あるいは高山から上高地経由で長野……と続く観光周遊ルートの一つに組み込まれたのです。高山直通列車の存在意義が再評価されました。

 今回、「大阪ひだ」が新車投入で存続したのも、将来を見据えての判断でしょう。

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冬の高山駅のキハ85。東海北陸道が開通して鉄道利用は減少したが、路面が凍結する冬期は利用が増える(森口誠之撮影)。

 筆者は2月の平日、「大阪ひだ」に乗って下呂まで日帰りで往復してきました。指定席の乗車率は8割、自由席は3割くらい。所定の3両編成で増結はありませんでしたが、1、2年前と比べると利用はかなり回復していました。外国人観光客も3組見かけました。

「ひだ」の2022年度お盆の輸送量は2018年度比で103%、年末年始も同81%まで回復しています。関西空港の2023年1月期の国際線旅客外国人旅客数は136万人、2019年比53%まで復調しています。「大阪ひだ」のさらなる活躍を期待したいものです。

【了】

【長ぇー!】「大阪ひだ」の運行区間を比較(地図で見る)

Writer: 森口誠之(鉄道ライター)

1972年奈良県生まれ。大阪市立大学大学院経営学研究科前期博士課程修了。国内全鉄道と海外80ヶ国以上を旅しながら鉄道史や資料調査に没頭する。主な著書に『鉄道未成線を歩く 国鉄編』『同 私鉄編』、『開封!鉄道秘史 未成線の謎』など。

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コメント

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1件のコメント

  1. そのくせ、富山直通列車のグリーン車は全部高山打ち切りにするんだから矛盾してる。
    こないだ実際に乗ってみたが、居住性はやっぱりキハ85系のグリーン車には遠く及ばなかった。
    とは言っても、あの東海だからこのままでは絶対に復活させないだろう。
    株主総会で吊し上げるか、外国人観光客向けのプロモーションに長けたインフルエンサーに、高山~富山直通のメリットを強くアピールしてもらって、この区間が2両なんて極少両数で済まなくなるようにするしかないだろう。